健康について気をつけている方は「食物繊維は体に良いもの」と認識している方が多いと思います。
コンビニで売られている商品にも食物繊維が入っていることをアピールしているものがあったり、中性脂肪を下げる効果が認められているトクホや機能性表示食品に使われている「難消化性デキストリン」は食物繊維ですから、それで「体に良いもの」というイメージが定着しているのでしょう。
参考:中性脂肪を下げるトクホに使われている難消化性デキストリンってどんなもの?
でも、食物繊維は食べると良い効果があるのは知っているけど、なぜ良いのかまでは詳しく知らない方も多いと思います。
食物繊維は消化されずに大腸まで運ばれ、そこで様々な重要な役割を果たしていることがわかっています。
一つ例をあげると、食物繊維は腸内を移動しながら不要物をからめて腸内をきれいにしてくれます。そのため、便秘の予防や改善の効果があります。
便秘を予防したり、腸内環境を良くしたりすることも中性脂肪対策には必要なことです。
では、中性脂肪を下げたい人は、食物繊維を摂るためにどんな食べ物をどんな風に食べるのが良いのでしょうか?
詳しくご説明します。
食物繊維の種類
まずは、食物繊維の種類について解説していきます。
食物繊維は、水に溶ける「水溶性食物繊維」と水に溶けない「不溶性食物繊維」の2種類に分類されます。
この2種類は、保水性、溶解性、吸着性、粘性などの違いにより、生体内でそれぞれ違う役割も担っています。
水溶性食物繊維
「水溶性食物繊維」は、食べたものをゲル状に包み、ゆっくりと腸へ運んでいきます。
便のコレステロールや有害物質も水溶性食物繊維に包まれ排出されます。また、腸内細菌の善玉菌のエサとなり、腸内環境を整える働きもあります。
水溶性食物繊維が多く含まれる食品は、こんにゃく、海藻類(わかめ、昆布)、果物(りんご、もも、いちごなど)、野菜(モロヘイヤ、枝豆、ブロッコリーなど)などがあります。
海藻類(わかめ・昆布)
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不溶性食物繊維
「不溶性食物繊維」は、便のかさを増やしたり、便を軟らかくしてくれる働きを持ちます。その結果、排便が促進され、腸内での便の通過時間が短くなります。
これにより、大腸粘膜が発がん性物質などの有害物質と接触する時間が短くなるため、大腸がんの予防につながります。
不溶性食物繊維が多く含まれる食品は、きのこ類、ごぼう、大豆などがあります。
きのこ類
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食物繊維の働き
次に、食物繊維の働きについてご説明していきます。
肥満防止
1つめの働きは「肥満防止」です。食物繊維は食べるときの咀嚼回数を増加させ、唾液などの消化液の分泌を高めます。
また、消化管内で膨張することで食物のかさを増し、胃の中での滞留時間を長くしてくれます。その結果、満腹感を与え、食べ過ぎを防止してくれます。
中性脂肪を下げたい方が摂ると良い理由の一つが、満腹感が得られて食べ過ぎ防止になるということです。
コレステロール値の上昇を抑制
2つめ働きは「コレステロール値の上昇を抑制する」です。
水溶性食物繊維は、小腸内でコレステロールやコレステロールの原料である胆汁酸を吸着して排泄してくれます。
中性脂肪が高いと超悪玉コレステロールを生み出すなどコレステロールの質が悪くなりますので、中性脂肪が高い方・下げたい方が摂ると良い二つ目の理由になります。
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血糖値上昇の抑制
3つめの働きは「血糖値上昇の抑制」です。
水溶性食物繊維の粘性により、胃から腸へ移動する時間がゆっくりとなるため、でんぷんの消化吸収速度がゆっくりになります。
そのため、血糖値の上昇も緩やかになります。
血糖値の上昇を抑えることは肥満防止になりますので、中性脂肪対策になります。
便秘予防
4つめの働きは「便秘予防」です。
不溶性食物繊維で説明したように、便を軟らかくしたり、かさを増やすことで、排便を促す効果があります。
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5つ目の働きは「大腸がんの発症予防」です。
これも不溶性食物繊維の働きで、排便を促進することで、発がん性物質などの有害物質が腸内で滞留する時間を短くしてくれることによるものです。
食物繊維の上手な食べ方のポイント
では、次に食物繊維の上手な食べ方のポイントを説明していきます。
1.一口目は食物繊維の多い料理を!「ベジ・ファースト」を意識しましょう。
先ほど、食物繊維の働きで説明したように、食物繊維は血糖値の上昇を抑制する効果があります。
そのため、食物繊維を先に食べることで、後で食べる糖質の吸収を緩やかにするので、食べたものを中性脂肪として蓄えるのを抑えてくれます。
また、満腹感も与えてくれます。そのため、食物繊維をはじめに食べることで満腹感を早く感じ、食べ過ぎ防止にもなります。
最近、ダイエット法で食べ方の順番に気をつける方法があります。
まず野菜から食べることを意味する「ベジ・ファースト」です。野菜から食べることで、食物繊維を先に摂ることができます。
このように、食べる順番を意識するだけで、糖質の吸収を抑えることができ、食べ過ぎ予防になります。
ぜひ次の食事から「ベジ・ファースト」をはじめてみましょう!
2.食物繊維をたくさん摂りたいときは、加熱して食べましょう。
生野菜をたくさん食べて食物繊維を摂ろうとすると、かさが多くて食べるのが大変です。
そこで、食材を加熱し、かさを減らして食べるのがポイントになります。
また、食物繊維を加熱することで膨張するため、腹持ちもよくなります。
ただ、水溶性食物繊維は水に溶けだしてしまうので、その場合は煮汁まで飲むようにするといいでしょう。
例えば、食物繊維たっぷりのスープは簡単に作ることができます。
人参、大根、レンコンなどの根菜類、きのこ類を食べやすい大きさに切って鍋でコトコト煮込みます。
この時点で、一食分ずつに分けて冷蔵庫や冷凍庫で保存しておきます。食べるときに、コンソメ、味噌、カレー粉などで味付けを毎回変えると、毎食飽きずに食物繊維たっぷりのスープを食べることができます。
3.発酵食品と一緒に摂りましょう。
食物繊維は発酵食品と一緒に摂るとメリットがあります。
発酵食品には、乳酸菌がたくさん含まれています。乳酸菌には、腸内の善玉菌を増やし、一方悪玉菌の増殖を抑制する働きがあります。
食物繊維は乳酸菌のエサとなり、乳酸菌を活性化させます。そうすることで、腸内環境が整い、余分な中性脂肪やコレステロールを排出しやすくなります。
発酵食品は、ヨーグルト、味噌、醤油、納豆、キムチなどがあります。
それぞれの発酵食品のおすすめの食べ方もご紹介しておきましょう。
ヨーグルト
ヨーグルトにレーズンなどのドライフルーツを入れて、フルーツヨーグルトにして食べるといいでしょう。
ドライフルーツは、なるべく砂糖や油などのコーティングがされていないものが特におススメです。
ヨーグルトだけよりも、食感もあるので噛む回数が増え、食べ過ぎ防止にもなります。
納豆
納豆ときのこのパスタがおススメです。
パスタをゆで終わる1分前に、えのきやしめじを入れてパスタと一緒に茹でます。
その後、湯を切ってから、器に盛り付け、醤油で和えた納豆、のり、ネギをトッピングすれば出来上がります。
きのこによってボリューム感もでるので、パスタの量を減らして作ることもできます。
カロリーを抑えたパスタを食べたいときにはおススメです。
キムチ
キムチサラダがおススメです。
レタス、わかめ、トマトなどの野菜に、食べやすい大きさに切った豆腐を器に盛り、その上にキムチをのせて、ごま油をかければ出来上がりです。
味噌・醤油
野菜をたっぷり使った味噌汁などの汁物がおススメです。
食材を加熱するのでかさも減らすこともできます。
味噌や醤油などの発酵食品はよく和食で使われる調味料になります。
和食を食物繊維の多い食材で作ると、自然と発酵食品と食物繊維を一緒に食べ合わせることができます。
食物繊維が摂れる料理のレシピ
中性脂肪撃退スープ
脂肪燃焼を促進する効果があるトマトODA(13-oxo-ODA)が含まれるトマト缶をベースにした野菜たっぷりのスープ。
加える野菜には食物繊維が豊富に含まれています。
そして、たまねぎに含まれる硫化プロピルという成分は、加熱すると「トリスルフィド」「セパエン」という、中性脂肪値を低下させる作用がある物質に変化します。
まさに余分な中性脂肪を撃退するパワーのあるスープです。
<材料>
- たまねぎ(大)・・・・・3コ
- キャベツ(大)・・・・・2分の1コ
- ピーマン(大)・・・・・2~5コ
- セロリ・・・・・・2分の1本(葉っぱも全て使う)
- ホールトマト(缶詰)・・・・1缶(400g)
- チキンスープの素・・・・・味付けなのでお好みで(2~5コ)
<作り方>
- 野菜を食べやすい大きさに切る。
- スープの素とトマト缶と野菜を一緒に大きな鍋に入れる。
- 水を野菜が浸るくらいたっぷり入れ、20分以上煮込む。
- その後野菜が柔らかくなったら塩・コショウで味付けする。
〔調理のコツ〕
※先に鍋に湯を沸かし、スープの素を入れて切ったものから鍋に入れていき、最後にトマトを入れる。(その方が効率が良い)
※味付けに塩・コショウ・カレーパウダー・チリソースなどお好みに応じて味付けしても良い。
4種類の野菜のスープ
たまねぎ、キャベツ、人参、かぼちゃの4種類の野菜を使ったスープです。
たまねぎには硫化プロピルという成分が含まれています。
この成分は加熱すると「トリスルフィド」「セパエン」に変化するのですが、この「トリスルフィド」「セパエン」もには中性脂肪値を低下させる作用があります。
キャベツは食物繊維が豊富に含まれ、緑黄色野菜の人参、カボチャには抗酸化作用があるβ-カロテンが活性酸素を抑制します。
マクロビオテックでは、この4種類の野菜の煮汁は膵臓を元気にするといわれています。
<材料>
- たまねぎ(大)・・・・・1コ
- キャベツ・・・・・4分の1コ
- 人参・・・・・3分の2本
- かぼちゃ(大)・・・・・5分の1コ
- 塩・・・・・少々
<作り方>
- 4つの野菜を細かいみじん切りにする。
- 全部の野菜の量の3~4倍の水を入れて加熱する。
- 沸騰したらとろ火で25分間煮る。
- 塩で味を調える。
小豆粥
食物繊維が豊富な小豆と昆布を使ったやさしい風味のおかゆです。
小豆には血中の中性脂肪やコレステロールの生成を抑えるサポニンが含まれています、脂質の代謝を促進します。
また、昆布に含まれる水溶性食物繊維のアルギン酸とフコイダンは、中性脂肪やコレステロールの吸収をおさえます。
<材料>
- 米(できれば玄米か分搗き米)・・1カップ
- 小豆・・・・・大さじ2
- 水・・・・・8カップ(4カップ+4カップ)
- 塩・・・・・小さじ2分の1
- 昆布・・・10センチ程度
<作り方>
- 米を洗って水を切る。
- 圧力鍋または土鍋で米を煎る
※プチプチの音と香ばしい匂いを確認 - 小豆を洗って2.に入れて4カップの水と昆布と塩を加えて火にかける
- 沸騰してきたら弱火にして25分~30分炊く。
- 火からおろし15分蒸らす
- 残りの水(4カップ)と塩を入れ、混ぜながら柔らかくなるまで煮る。
〔調理のコツ〕
※小豆は米の15%くらいまで。
※圧力鍋に材料を入れすぎない。
小豆は便秘を改善し、利尿、浄血作用もあり、排毒、解毒にも良い食べ物です。
まとめ
食物繊維の働きや食べ方をご紹介しました。
まずは、食物繊維が多い食材である、野菜、海藻類、きのこ類を毎食食べるように心がけてみてください。
それだけでも、体の変化を感じる方がいるかもしれません。
そして、「ベジ・ファースト」「加熱して食べる」「発酵食品と食べる」ことでより効率よく食物繊維を摂ることができ、その効果を得ることができます。
ぜひ、次の食事からはじめてみましょう!
この記事を書いた管理栄養士さん
名前:あや
保有資格:管理栄養士
大学・大学院で生活習慣病について研究、卒業後は製薬会社に勤務。
栄養学に興味を持ち、管理栄養士資格を取得。
現在はダイエット・更年期向け向けの食事指導を行っている。