健康診断では血中脂質について、いくつかの項目が調べられます。コレステロール値と合わせて調べられる「中性脂肪」。ひっかかってしまうことも多いのではないでしょうか。
血中脂質のバランスが乱れていても自覚症状はありませんので、検査結果を見てビックリ!なんてことも珍しくありません。
でも、高くなる前から生活を見直しておけばビクビクする必要もありません。
もし高めと言われたら、上昇を食い止めるには早めに対策を立てることが大切です。ポイントを見ていきましょう。
中性脂肪とは
対策のポイントをご紹介するの前に、まず中性脂肪は何かを理解しておきましょう。
中性脂肪は、トリグリセリドとも言います。トリとはギリシャ数字で「3」という意味。つまり中性脂肪とは、グリセロールというアルコールに脂肪酸が3つ結合しているものなのです。
そして、食品中の脂肪は、ほぼこの「トリグリセリド」の形で含まれています。
中性脂肪を高める原因
中性脂肪を高める原因には遺伝も関係していますが、やはりとても影響が強いのは食生活だと言えるでしょう。
私たちはエネルギーを炭水化物や脂質から摂取しています。中性脂肪のコントロールで気をつけたいのは、たんなる脂質の摂り過ぎに気をつければ良いといったことにとどまらないところ。
脂質の摂り過ぎはもちろん、炭水化物の摂り過ぎで、もしエネルギーとして使いきれない余ったものがあれば、私たちの体内では中性脂肪として蓄えられるのです。
ですから暴飲暴食・食べ過ぎといったことが中性脂肪を高める原因となります。
エネルギーが余れば肥満になっていきますが、肥満はさらに中性脂肪を増やすという悪循環に陥りますので、やはり中性脂肪を適度に保つためには食生活の改善が必須だと言えます。
食生活の見直しポイント
栄養バランスは崩さずに食べ過ぎを抑えていくことが大切ですので、いくつかのポイントを見ていきましょう。
ポイント1:主食の食べ方を見直す
主食にはごはんやパン、麺類といったものが入りますが、この手のものをしっかり食べているがために食べ過ぎになってしまうという方も少なくありません。
このパターンでは余った炭水化物が中性脂肪として蓄積されてしまう可能性が。
たとえばごはん茶碗を少し小ぶりのものに変えてみる、といった工夫一つでも、満足感を落とさずに主食の量をセーブすることができます。
またごはんを玄米や雑穀入りのものに変えてみるというのも方法の一つ。食物繊維の摂取量が増えて、エネルギーとなる糖質の量が減らせます。
これはパンでも同じ。精製された小麦粉で作られたパンよりも全粒粉で作られたパンの方が食物繊維を摂取できます。
また玄米にしろ、全粒粉にしろ、しっかりと噛むということが加わってくるため、満腹中枢が刺激されて食べ過ぎを抑えることができるという効果も。
玄米を使ったレシピ例
きのこ玄米リゾット
きのこがたくさん入ったヘルシーなリゾットです。
ぷちぷちした玄米の食感を楽しめます。
<材料(4人分)>
- 玄米・・・・1カップ
- エリンギ・・1本
- しいたけ・・4個
- 玉ねぎ・・・1/4個
- にんにく・・1/2かけ
- 白ワイン・・1/4カップ
- ブイヨン・・3カップ~
- オリーブ油・大さじ1
- 塩・・・・・少々
- パルメザンチーズ・・・お好みで
<作り方>
- 玄米は3時間以上吸水させてからザルにあけて水を切る。
- エリンギは4㎝長さの薄切り、しいたけは薄切り、玉ねぎとにんにくはみじん切りにしておく。
- 鍋にオリーブ油とにんにくを入れ、弱火で香りが出るまで炒める。
- 玉ねぎを加えて透明感が出るまで炒め、次に玄米を加えて更に炒める。
- エリンギとしいたけを加えて炒め少ししんなりしたら、白ワインを加え少し火を強めてアルコール分をとばす。
- ブイヨンを米がかぶるくらいまで加えて沸騰したら、火を弱めて水分が少なくなるまで煮る。この作業を米の硬さをみながら3~4回行う。
- 米がアルデンテになったら塩で味を整えて器に盛り、パルメザンチーズをふりかける。
たっぷりごぼうの玄米ピラフ
ごぼうには不溶性食物繊維のリグニン、水溶性食物繊維のイヌリンが豊富に含まれています。
リグニンは肥満や便秘を予防し、老廃物を排出する働きがあります。
イヌリンは血糖値の上昇を抑え、血中の中性脂肪を下げる働きがあります。
また玄米にはビタミンBも豊富。ビタミンはBは血液中の脂質や糖質をエネルギーに変える際に欠かせないもので、中性脂肪の産生を抑制する働きがあります。
<材料(4人分)>
- 玄米・・・・2合
- ごぼう・・・1本(100g)
- にんにく・・・1かけ
- オリーブオイル・・大さじ1
- コンソメ(顆粒)・小さじ2
- 小ねぎ・黒こしょう・・適量
<作り方>
- 玄米は洗って3~4時間ほど吸水させておく。
- ごぼうは皮をきれいに洗い、いちょう切りにし水にさらす。 にんにくはみじん切りにする。
- フライパンにオリーブオイルを熱し、弱火でにんにくを炒める。香りが立ってきたら、ごぼうを入れよく炒める。
- 3.に玄米を加え、全体がなじむまで炒める。
- 4.を炊飯器に入れ、水を炊飯器の目盛り通りに入れ、コンソメを加えて炊く。
- 全体をよく混ぜ合わせ、器に盛り、上から小口切りにした小ねぎ、黒コショウをかける。
<栄養素(一人分あたり)>
エネルギー:315kcal
コレステロール:0mg
食物繊維:3.8g
脂質:5.1g
食塩:0.7g
ポイント2:主菜は肉に偏っていない?
主菜とはメインのおかず。たんぱく質の供給源となる、肉・魚・卵・大豆や大豆製品などを主材料したお料理です。
たんぱく質の供給源としてはどれも優秀な食材ながら、お肉料理とお魚料理だと、どうしてもお肉料理が人気。
お肉料理に偏った食事で心配なのが、脂質の摂取です。
中性脂肪は「グリセロールというアルコールに脂肪酸が3つ結合しているもの」ですから、この脂肪酸の種類がその性質を大きく左右します。
肉に多く含まれている飽和脂肪酸は血中脂質のバランスを崩しやすく、摂り過ぎには注意したい脂肪酸。
一方魚に多いのはDHAやEPAといった、n-3系多価不飽和脂肪酸と呼ばれる種類の脂肪酸です。
これらの脂肪酸は、血中脂質バランスの改善や中性脂肪蓄積の抑制に働くとして期待の寄せられている脂肪酸で、サンマやアジ、イワシといった魚に多く含まれています。
脂質の摂り過ぎはエネルギー過剰になりがちなので、もちろん摂り過ぎてはいけませんが、一定量は身体に必要なもの。どうせ摂るなら身体にうれしいものを選びたいですよね。
また魚でも、ヒラメやタラなどの白身魚もあります。これらも適度に登場させましょう。なぜなら白身魚は淡泊で、脂質も少ないため、エネルギー量を抑えながらたんぱく質の摂取はきちんとできるのです。
お肉料理にばかり偏っていないか、お魚はいろいろな種類を食べているか、という2点に注意してみると、食生活の改善もしやすいでしょう。
ポイント3:お菓子や甘い物、食べ過ぎていませんか?
お菓子や甘い物には、やはり糖が多く含まれます。また洋菓子をはじめ、脂質の含有量も多いので、やはり高エネルギーになるのは仕方のないこと。
甘い物はクセになって、食べだすと止まらないので、ついつい食べちゃう習慣はやはり肥満、中性脂肪の蓄積へと進んでしまいます。
どうしても食べたいのなら1日200キロカロリーまで。まったくゼロにするのは困難でも上限を決めるだけでセーブできます。
このとき気をつけたいのは、意識せずに口にしている飲み物。甘い飲み物や清涼飲料水もお菓子と同じくエネルギー摂取につながることを忘れないで。
ごくごくとたくさん飲めてしまう点も、あっという間にエネルギーが加算されてしまいます。
ポイント4:アルコールは適量を守る
アルコールは飲み過ぎると肝臓を悪くすると知っている方は多くても、エネルギー源となってしまう点にまで意識がおよんでいない場合があります。
アルコール自体がエネルギーを持つほか、飲みながら食べるものは高エネルギーのものも多く、また口にする時間も遅い時間になりがちで、悪いことが幾重にも重なります
「酒は百薬の長」とも言いますが、これはあくまでも適量を守ってのこと。
酔ってくると食生活への高い意識も薄らぎがちです。意志を強く持ちましょう。
まとめ
食生活であてはまりそうなポイントをいくつか挙げてみました。
食事についてお話をしてみると「甘い物は食べないから大丈夫」とか、「お酒は飲まないから大丈夫」とか、どこか一部分だけを切り取って自分の食生活全体を見渡せていないことが多く見受けられます。
食事の楽しみを失わず、今の習慣を少し変えるだけで中性脂肪の上昇を抑えられたらと思い、いくつかのポイントを挙げました。
できているポイントを探すのではなく、できていないポイントを自分に問いかけるようなお気持ちで、ご自身の食生活を振り返っていただければ幸いです。
この記事を書いた管理栄養士さん
名前:Chika
保有資格:管理栄養士
フリーの管理栄養士。食関連資格の教材作成や専門学校講師などの仕事をしています。