豆腐や納豆などの大豆製品は、中性脂肪対策の食事を考えるときに強い味方になってくれるものです。
「強い味方」になる大きな理由は2つあります。
一つ目は、大豆に含まれる栄養素や成分に、脂肪の吸収を抑えたり脂肪の代謝を促進する、中性脂肪を減らす働きがあること。
二つ目は、良質な植物性のたんぱく質なので、肉類と置き換えることで、肉類に含まれる脂質の飽和脂肪酸の摂取を減らせることです。
大豆製品のどんな成分が中性脂肪対策に良いのかをご紹介します。
大豆製品の種類と取り入れ方
大豆を使った製品は、日本人の食生活に深く根付いています。
大豆そのものを煮大豆として食べることもあるとは思いますが、豆腐や納豆、味噌、しょう油と加工食品として口にする機会が多いのではないでしょうか。
その他にも豆乳、きなこ、おから、湯葉などたくさんの種類がありますので、主菜や副菜としてだけではなく、汁物や飲み物、間食にも取り入れることができます。
「もっと今より大豆を食べよう」と思ったら、その方法は案外簡単なのです。
大豆の栄養素をムダなく摂るには「蒸し大豆」もおすすめです。詳しくはこちらをご覧ください。
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蒸し大豆を中性脂肪対策の食事に取り入れよう
大豆は、たんぱく質、食物繊維、ビタミン類、ミネラルなど豊富な栄養成分を含みます。必須アミノ酸をバランスよく含んだ良質なたんぱく源でもあります。 また、コレステロールを含まないため、肉や魚のたんぱく質に ...
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中性脂肪対策に!大豆に含まれる注目成分
グリシニン
グリシニンは大豆たんぱく質の多くを占めている成分で、低コレステロールのたんぱく質源となります。大豆はその栄養価の高さから「畑の肉」などと呼ばれることがありますが、グリシニンを含んでいることが大きく関係しています。
大豆からたんぱく質を摂取すると、脂質の摂り過ぎによる中性脂肪の蓄積やコレステロールの上昇を避けることができるため、日頃の食事のたんぱく質源に大豆製品を取り入れるメリットがとてもあります。
それだけでなく、グリシニンには中性脂肪を減らす作用があることがわかってきています。
大豆レシチン
レシチンは大豆以外にも卵黄などが含んでいることで有名な成分で、細胞膜などの生体膜や脳・神経組織といった重要な組織の構成成分としても使われます。
水と油のように混ざり合わないものを親和する「乳化性」という性質を持つことで、食品添加物などに広く利用されています。
レシチンにはその乳化作用から、血液中の中性脂肪やコレステロールを溶かし、余分なコレステロールが血管壁に沈着することを防ぎ、動脈硬化を防ぐ働きがあると言われています。
また、レシチンは、コレステロールとアポ蛋白と呼ばれるたんぱく質を結びつける役割も担っています。
コレステロールとアポ蛋白が結びついた状態のリポ蛋白には、比重が低いものと高いものがあり、低比重のものが悪玉と言われる「LDLコレステロール」、高いものが善玉と言われる「HDLコレステロール」です。
同じコレステロールでも比重によって体内での作用が異なり、HDLコレステロールは余分なコレステロールを吸着し、血管にコレステロールが沈着するのを防いでくれることで歓迎されています。
レシチンは、このHDLコレステロールを増やし、LDLコレステロールを減らす働きがあると考えられています。
中性脂肪が高い方の場合、心配なのはLDLコレステロール値が上昇して、動脈硬化が起こりやすくなること。
ですから大豆からレシチンを摂取しておくことは、中性脂肪対策として必要であることがおわかりいただけるのではないでしょうか。
大豆サポニン
サポニンは大豆に含まれる、渋味や苦み、えぐみといったものを醸し出す成分です。
サポニンには、余分な脂肪の蓄積を防ぐ働きがあります。
さらに、脂肪の燃焼を促進させる働きがある「アディポネクチン」の分泌を促進させる働きもあります。
このように、「脂肪の蓄積を防ぐ」「脂肪の代謝促進」という2つの肥満を防ぐ働きがあるので、中性脂肪対策としてとても大切な役割を担っている成分です。
また、大豆サポニンには強い抗酸化作用があり、体内における脂質の過酸化を抑制し、代謝を促進する働きがあると言われています。
体内の脂質が過酸化すると血栓のもとにもなるため、血中脂質の改善と同時に血栓予防にも対策を立てたいところ。
サポニンが含まれている大豆は、この点においても優秀な食材なのです。
抗酸化作用は脂質異常症だけでなく高血圧や肝臓障害、動脈硬化といった数々の生活習慣病予防に効果が期待できます。
中性脂肪が高めの人は、これらの生活習慣病のいずれもリスクが高まりますので、大豆サポニンの役割も見逃せません。
ナットウキナーゼ
大豆そのものに含まれている成分はもとより、大豆の加工品には発酵食品も多いため、発酵工程における健康効果も得ることができます。
代表的なのが、納豆。納豆は大豆に納豆菌を作用させて作られますが、その発酵過程でナットウキナーゼというねばねば成分の中の酵素を生じます。
このナットウキナーゼは血栓を溶かしたりできにくくする作用があり、脳梗塞や心筋梗塞の予防につながります。
血栓予防の効果を期待するのではれば、血栓ができやすい就寝前の夕食に食べると効率的だと言われています。毎日1パックの納豆を習慣化させてみてはいかがでしょうか。
またナットウキナーゼは腸内の有用菌を増やして腸内環境の改善に働く効果も知られています。
腸内環境が整うということは排泄がうまくいくということ。私たちの身体は消化や吸収だけでなく、排泄まできちんと行えてこそ循環していくものです。
体内の余分なものを排泄できれば肥満も起こりにくくなりますので、中性脂肪対策としては口から入れるものだけでなく、排泄作用にまで気を配りたいところです。
中性脂肪対策におすすめの食品は「オサカナスキヤネ食」といわれています。「ナ」は納豆のことです。
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大豆のたんぱく質は栄養価が高く良質
たんぱく質は私たちの身体に欠かせない栄養素です。エネルギー源となることはもちろん、身体を構成する成分として重要な働きをしています。
また体内の調整に必要なホルモンや酵素の材料にも使われています。
効率的にたんぱく質を利用するためには、「良質なたんぱく質」を摂取することが大切。
良質なたんぱく質が摂れる食品には、肉・魚・卵・牛乳や乳製品と動物性のものが多いのですが、植物性食品でこれらと同等に良質なたんぱく質を供給してくれるのが大豆や大豆製品です。
近年では、動物性たんぱく質の摂取比率上昇に伴い、脂質の摂取量が増えてきています。動物性たんぱく質に含まれる脂質は飽和脂肪酸で、中性脂肪が気になる人は減らすべき脂質です。ですから、たんぱく質の摂り方にも注意が必要。
動物性たんぱく質ではなく、大豆製品から植物性のたんぱく質を摂る機会を増やすことで、飽和脂肪酸の摂取を減らすことができます。
豆腐・納豆を使ったレシピ例
豆腐のステーキ・野菜あんかけ
豆腐に含まれるグリニシンには中性脂肪を下げる効果があります。
低カロリーの豆腐とたっぷりの野菜をおいしく頂ける一品です。
<材料>
- 木綿豆腐・・・・・1丁
- 玉ねぎ・・・・・2分の1コ
- 人参・・・・・3分の1本
- しめじ・・・・・2分の1株
- いんげん又はさやえんどう・・・茹でて千切り
- ごま油・・・・・適宜
- だし汁・・・・・1カップ
- 塩・・・・・小さじ1
- 薄口醤油・・・・・小さじ2
- 葛粉・・・・・大さじ2
- 水・・・・・大さじ2
<作り方>
- しっかり水切りした木綿豆腐を4枚に切り、水気を拭き取ってから焼く。
- 鍋に2分の1カップの水を沸騰させ、玉ねぎを甘味が出るまで炒める。
- 2.の上にしめじを乗せて塩を振り入れ、さらに人参を乗せて蓋をして蒸し煮にする。
- 野菜に火が通ったらだし汁を加え、塩と醤油で味を調える。
- 水で溶いた葛を入れてとろみをつける。
- 1.に野菜あんをかけ、いんげんを飾る。
〔調理のコツ〕
※豆腐はしっかりと水を切る(前日から冷蔵庫で水切りすると良い)
※豆腐は焼かずに蒸しても美味しい。
豆腐のきのこあん
きのこ類には糖質の代謝を促進させるナイアシンなどのビタミンB群や、腸内をきれいに免疫力を高める働きのあるβ-グルカンが含まれています。
特にまいたけにたくさん含まれています。
中性脂肪やコレステロールを体外に排出する働きのある不溶性食物繊維も豊富に含まれています。
豆腐のたんぱく質に含まれるグリシニンには、中性脂肪を減らす効果があります。
<材料(1人分)>
- 絹豆腐・・・・・1/4丁
- 手作りなめたけ・100g
- 長ねぎ・・・・・1/2本
*「手づくりなめたけ」のレシピはこちらです。
<作り方>
- 小鍋に基本の手作りなめたけと、食べやすい大きさに切った豆腐、小口切りにした長ねぎを入れ火にかける。
- 全体に火が通ったら器に盛る。
<栄養素(一人分あたり)>
エネルギー:84kcal
コレステロール:0mg
食物繊維:0.4g
脂質:2.8g
食塩:0.4g
イカキムチ納豆
いかにはタコと同様タウリンが含まれており、中性脂肪やコレステロールを低下させる効果が期待できます。
納豆やキムチなど発酵食品は腸内環境を整える働きがあります。
キムチには乳酸菌がたくさん含まれています。そして、納豆菌はタンパク質や糖質を分解して消化を助けるだけでなく、腸内の乳酸菌を増やす働きがあります。
ですから、納豆とキムチの組み合わせは、腸内環境にとってとても良い組み合わせですね。
腸内環境を整えると、善玉菌が増えて分解しやすくなり、中性脂肪が体に吸収されるのを抑えてくれます。
また、納豆に含まれるビタミンB2は、体内で糖質がエネルギーに変換されるのを助ける働きがあるので肥満予防も期待できます。
さらに、中性脂肪が血液中に増えると血液の流れが悪くなりますが、納豆のナットウキナーゼには、血液をサラサラにする効果があります。
<材料(2人分)>
- いか刺身・・・・100g
- キムチ・・・・・30g
- 納豆・・・・・・1パック(50g)
- 濃口しょうゆ・・小さじ1/2
<作り方>
- ボウルにキムチ、納豆、しょうゆを入れよく混ぜる。
- いかの刺身を器に盛り、上から1.をかける。
<栄養素(一人分あたり)>
エネルギー:103kcal
コレステロール:90mg
食物繊維:2.2g
脂質:3.2g
食塩:1.1g
ねばねば納豆丼
納豆を使って混ぜるだけの簡単ボリューム丼です。
納豆に含まれるたんぱく質のグリシニンには中性脂肪を下げる働きがあります。
また、納豆に含まれるビタミンB2には、摂取した脂質をエネルギーに変えるのを助ける働きもあります。
そして、まぐろはEPA・DHAが豊富な魚。中性脂肪を下げるEPAを摂ることができます。しかも、生で食べるられるのでムダなく摂れますね。
青のりの風味が香って、とてもおいしく頂ける一品です。
<材料(4人分)>
- ご飯・・・・4膳分
- 納豆・・・・80g
- オクラ・・・8本
- 長芋・・・・100g
- まぐろ・・・100g
- 青のり・・・小さじ1
- しょうゆ・・小さじ2
- 鰹節・・・・お好みで
<作り方>
- オクラは板ずりしてうぶ毛をとり、塩茹でした後に1㎝幅に切る。
- 長芋とまぐろは1㎝角の角切りにする。
- 納豆・オクラ・長芋・まぐろ・青のり・しょうゆをすべて加え、粘りが出るまで混ぜる。
- 器にご飯を盛り、3をかけてから鰹節を添える。
まとめ
大豆というと近年注目を集めていたのがイソフラボンという成分。
女性ホルモンと似たような働きをすることから、閉経後の女性をはじめ、若い時期から摂った方が良いと女性には大豆の働きがやや見直されるきっかけとなりました。
けれど、グリシニンやレシチン、サポニン、ナットウキナーゼといった他の有効成分を見ていくと、大豆の健康効果が女性限定なものではないことがわかってきます。
むしろたんぱく質の供給源が肉に偏りがちな食生活である男性には、大豆を食生活に取り入れることによって、たんぱく質摂取量を落とさずに血中脂質のバランスを整えてくれる働きが必要なのです。
お酒の席でもついついお肉や揚げ物をおつまみにしがちですが、そのうちのいくつかを冷奴などの大豆製品や大豆も入っている筑前煮に置き換えてみてはいかがでしょうか。
エネルギー量も減らすことができるでしょう。
また、わざわざ料理をしなくても、納豆や豆腐はそのままでも食べることができます。日頃のお食事にプラス一品するのも、納豆や豆腐であればさほど手間にはなりません。
ほんの少しの心がけで、たんぱく質の供給源を大豆や大豆製品にシフトしてみましょう。
この記事を書いた管理栄養士さん
名前:Chika
保有資格:管理栄養士
フリーの管理栄養士。食関連資格の教材作成や専門学校講師などの仕事をしています。