お酢は身体によいというイメージありませんか? 疲労回復効果なんてよく耳にします。
酢の健康効果は、漠然としたイメージだけにとどまらず、具体的に研究されています。
酢を継続的に摂取することは、内臓脂肪や血中中性脂肪、体重、BMI、腹囲を下げるという臨床試験結果を、酢のメーカー(ミツカン)が学会で発表したり、論文報告したりしているほど。
参考:【第63回日本栄養・食糧学会大会レポート】大さじ1杯のお酢を3カ月のんで内臓脂肪が減少ミツカンが臨床試験で確認、論文発表も
こちらはリンゴ酢を使った試験でしたが、効果が期待できるのはリンゴ酢に限らないんです!
酢をもっとよく知れば上手に中性脂肪や内臓脂肪が減らせるかも!?
酢の種類
酢は発酵調味料の一種です。しょう油や味噌が発酵食品であることは有名ですが、酢も発酵食品であることをご存じない方も案外おられるのではないでしょうか。
酢は酢酸菌で米などの穀類やリンゴなどの果実を発酵させて、独特の酸味を得ます。
ですから酸味の正体は酢酸。ただし酸っぱいだけでなくうま味成分のアミノ酸も含んでいるため、まろやかな風味を持っていて、味付けに大活躍します。
種類と特徴を見てみましょう。
穀物酢
トウモロコシや麦類、米から作った酒粕などを使って醸造した酢。クセがないので和食に限らず、中華や洋食などにも使いやすいお酢。
酒粕を原料にしたものは漬物にも向いています。
一般に広く売られていますので入手しやすく、お手頃な価格のものが多いでしょう。普段使いしやすいお酢です。
米酢
穀物酢のうち、米を原料としたもので、酸味がしっかりしていてさっぱりとした味わい。酢飯や酢の物なんかに使われます。
リンゴ酢
リンゴの搾り汁を使うので、フルーティーでまろやか。ドレッシングや洋風のソースに仕立てることもできます。
果実酢はリンゴ以外にもブドウを使ったものもあって、ワインビネガーなども果実酢の一種。
バルサミコ酢
イタリアで伝統的に作られてきた酢。芳醇な香りとまろやかな甘みがあるので、最近では料理にとどまらずお菓子にまで使われていますね。
このように種類も豊富で、各々特徴もありますから、お酢は意外と使い勝手のよい調味料なのです。
酢の成分と効果
酢は酢酸をはじめとする有機酸や糖類、アミノ酸、エステルなどを含んでいます。酢酸は酸味が強く酢の主成分ですが、果物の香気成分として含まれることもあります。
複雑に成分が混ざっているものなので、お酢を料理に利用すると単に酸味が強くなるだけではなくて、味にまろやかさが加わったり、清涼感が増したりして、料理の風味を高めてくれるのです。
また、酢は酸性の食品ですので、微生物で生き残れるものは乳酸菌のような一部の微生物くらい。殺菌作用があるため保存性を上げてくれる効果としても、よく利用されますよね。
この他にも酢の酸性を利用して野菜を色鮮やかにしたり、魚の臭みを消して酢でしめたり、他の調味料にはない酢ならではの調理法で広く活躍しています。
酢と生活習慣病
独特な風味で味付けに広く利用されてきた酢ですが、生活習慣病との関連でもうれしい効果があります。
たとえば中性脂肪や内臓脂肪との関連。内臓脂肪の蓄積はさまざまな生活習慣病のリスク要因となります。余分な中性脂肪を溜めこまないようにすることが大切。
お酢は食べ物が胃で滞留する時間を長くしてくれるので、糖や脂肪の小腸での吸収を遅らせてくれるのではないかと考えられています。
そのため継続的な酢の摂取がメタボリックシンドロームの予防に有効であるとされています。
また高血圧との関係では、塩との関連でうれしい効果が。酢を効果的に使うことで食塩使用量を減らしても薄味に感じにくくなり、減塩に繋がるのです。高めの血圧も酢によって低下するので、相乗効果ですね。
日頃のカルシウム不足を補うにも酢は効果を発揮します。
カルシウムは不足しがちで将来の骨の健康のためにもきちんと摂取しておきたい栄養素です。でも吸収率が低いのが難点。酢はカルシウムを吸収しやすくしてくれるので、併せて摂ると効果的。
また、貝類を殻ごと酢入りの煮汁で調理するとカルシウムが溶出して、摂取量がアップするという効果もあります。
このように、中性脂肪にとどまらず、さまざまな生活習慣病対策にも酢の摂取を見直したいところです。
酢の上手な使い方と取り入れ方
酢の上手な使い方をご紹介します。
酒・みりんを加えてまろやかにする
お酢が苦手だとおっしゃる方は、酸味がきつすぎる点がネックなようです。そのような場合には、酢に酒やみりんを加えてみるとまろやかな味に仕上がります。
酒やみりんにはアルコールが含まれていますので、煮切ってアルコールを飛ばしてから使うとさらにまろやかに。
二杯酢・三杯酢
おしょう油や塩や砂糖を加えてまろやかにする方法もあります。
塩分や糖分は健康効果を期待して酢を使う場合には敬遠してしまいそうですが、それほど大量に使うものではありません。
あくまでも目安ですが、「二杯酢」であれば酢に対してしょう油は半分程度、あとはだしを適量混ぜてまろやかにすればOK。
応用で「三杯酢」になると酢1に対してしょう油はその半分、砂糖は酢の1/4程度。だしでもよいですが、柑橘類の搾り汁を入れるとまろやかさとおいしさがアップします。
三杯酢は食材を選ばず酢の物全般に使うことができます。
お肉をやわらかくする
すじ肉をお酢に漬けてから調理をするとお肉をやわらかくしてくれるという効果も、お料理にはぜひ利用したいワザ。
お肉のコラーゲン組織をやわらかくしてくれるからで、脂身の少ない肉もおいしく食べられますから、お酢の摂取にくわえて、エネルギーダウンもできますね。
ビネガードリンクとして
もっとお酢を取り入れたいということであれば、ビネガードリンクも。リンゴ酢やブドウ酢といった果実酢はフルーティーさも残っているので、向いています。
酢をあまり濃いまま飲むのは消化管に負担がかかってしまいますので、5倍くらいの水や炭酸水で割って飲むようにしましょう。寒い時期にはホットもオススメです。
まとめ
健康効果を狙って食品をクローズアップするときにありがちなのが、「その目的には効果があるかもしれないけれど、身体に悪くないの?」と心配になるような方法。
健康になりたいがために実践しているのに、他の面で不具合が生じるなんて本末転倒ですよね。
酢に関しては、生活習慣病をはじめ日頃から摂取不足気味のカルシウムにもアプローチができる点など、幅広く問題解決に効果を期待できます。
難しいアレンジをする気にはなれないという方へ最後に奥の手を…。それは「脂っこい料理に酢をひとたらしする」という、なんとも簡単な方法。
お酢が油の粒子を細かくしてくれるので、さっぱりと食べられます。こってりした料理が続くと胃も疲れてきてしまいますので、試してみてくださいね。
この記事を書いた管理栄養士さん
名前:Chika
保有資格:管理栄養士
フリーの管理栄養士。食関連資格の教材作成や専門学校講師などの仕事をしています。