「脂ののった魚」と聞くと、ブリを思い浮かべる方も多いのではないでしょうか。「ブリ」という名前の由来は、一説には「あぶら」から「ぶら」、「ぶり」と変化していったとも言われているくらいです。
その脂は、中性脂肪を下げる働きのあるEPAとDHAです。
古くから日本の食文化に根付いている魚で、お祝い事には欠かせないという地域も多くあります。
今回はそんなブリ(鰤)について、栄養素や食べ方を中心に、ちょっと迷いがちな「選び方」もあわせてご紹介したいと思います。
ブリ(鰤)の種類
ブリを選ぶのは難しい!なぜかと言うと、出世魚だからです。成長に従って名前が変わっていく出世魚は縁起が良いとされていますが、ブリを買いに行っても「ブリ」という名前で売られていないこともあるので、お魚初心者には実はちょっとハードルが高い魚なのです。
そして地域によって呼び名が違う点も、難易度を上げている理由の一つ。
呼び名の違いは大きさによって分けられますが、よく聞くところの名前を挙げてみると「イナダ」「メジロ」「ハマチ」「ワラサ」はいずれもブリになる前の名前。
ブリが旬ではなくて売り場になくても、これらの名前であれば代用できます。
だいたい身の大きさが70センチメートルくらいになってくると「ブリ」と呼ばれるようになります。
ただしやはり旬の時期の魚は脂がのっていて美味です。ブリになる前の小さい状態だと、物足りなさを感じてしまうかもしれません。
そんな時には「カンパチ」や「ヒラマサ」を買ってみるのも手です。
これらはブリの仲間の魚で、ブリの旬は冬ですが、カンパチやヒラマサは夏に旬を迎えるのでブリの入手が困難な時期でも楽しむことができます。
ブリ(鰤)に含まれている栄養素・成分
EPA・DHA
たんぱく質、脂質を共にしっかり含んでいます。脂ののりはとくにお腹側で良く、n-3系多価不飽和脂肪酸(オメガ3脂肪酸)であるEPAやDHAの摂取に適しています。
魚を食べて血中脂質バランスを改善したいという考え方の中心には、EPAやDHAの働きがあります。EPAとDHAには中性脂肪を下げる働きがあります。
EPAやDHAは血栓という血の塊を溶解してくれることで血管が詰まりにくくなったり、血小板の凝集を抑制することで血液の粘度を適正にしてくれたりする効果が期待できる脂肪酸です。
血液が粘度を持つことや血栓を形成することは、動脈硬化やひいては虚血性心疾患や脳血管疾患といった命をおびやかすような状態を引き起こします。
血中の中性脂肪値が高い、コレステロール値が高いという状況はすでにバランスが崩れ始めており、非常にリスクの高い状況です。EPAやDHAの意識的な摂取で状況改善に努めましょう。
中性脂肪対策ではEPA・DHAを摂るのはとても重要なことです。EPAとDHAを効率良く摂る方法についてはこちらの記事でも詳しく解説しています。
ビタミンE
ブリ(鰤)はビタミンEも豊富です。ビタミンEは別名「若返りのビタミン」なんて呼ばれることもある、抗酸化力の強い栄養素です。
酸化されやすい性質を持つEPAやDHAと相性が良い組み合わせになっています。
抗酸化作用は今とても期待されている効果です。反応性の高い酸素である活性酸素は、ある程度は身体に必要なものではありますが、多すぎることは種々のトラブルを引き起こします。
現代社会では活性酸素が発生しやすい環境にあります。活性酸素は生体膜や細胞膜の不飽和脂肪酸を酸化しやすく、過酸化脂質が生成されてしまいます。
また血中コレステロールも酸化されやすく、過酸化脂質の生成につながります。過酸化脂質は血管壁に沈着してやがて動脈硬化を引き起こします。
そのため抗酸化力の強いビタミンEの働きは非常に重要なのです。
ビタミンEは過酸化脂質を分解することで血行を改善してくれることでも知られています。
タウリン
このほかブリの血合い部分には鉄分や肝機能を高めてくれるタウリンが含まれています。
タウリンも中性脂肪・コレステロールの数値改善に働いてくれる、魚介類から摂取したい成分の一つ。
ブリはいかにも脂がのっていますが、味わいを裏切らない栄養価の高さを誇る魚なのです。
ブリ(鰤)の選び方と注意点
さばかれる前の状態であれば、身がふっくらしていてハリがあるかを見ましょう。
切り身で見ることが大半だと思われますので、身に透明感があり、血合いも鮮やかな色合いであるかを確認しましょう。
身が黒っぽくなってしまっている場合は鮮度が落ちているので避けるようにします。
EPAやDHAは酸化に弱いので、鮮度が落ちているということは身が空気にさらされていた時間が長いということになります。
せっかく良質な脂肪酸を求めてブリを食べるのに、酸化されていてはかえってマイナスになってしまいますから、注意しましょう。
保存の際も空気にさらさないことを意識します。ペーパータオルで包んだ上からラップをして密封して、冷蔵庫のチルド室で保存しましょう。
冷凍の場合はできるだけ速やかに凍るようにすると状態の良いまま保存することができます。
ブリ(鰤)のEPA・DHAを上手に取り入れるコツ
ブリには定番料理がいくつかありますね。EPAとDHAを摂るには、どんな風に食べるのが良いのでしょうか。
生で・お刺身
鮮度の良いものは刺身で楽しむのがイチバンかもしれません。
生はEPA・DHAはもちろん栄養素の損失が抑えられる優秀な調理法であり、新鮮なものでしか楽しむことのできないぜいたくな楽しみ方ですよね。
焼く・ブリの照り焼き
「ブリの照り焼き」。みりんや料理酒、お醤油の味付けでごはんにもよく合う、おいしい食べ方です。
調理で気をつける点は、もともとしっかり脂を含んでいる食材ですから、調理の際に脂質を追加しすぎないように仕上げると良いでしょう。
ぶりのゆず胡椒焼き
ブリには中性脂肪の値を下げる働きのあるDHA・EPAが豊富に含まれています。
特に腹側の切り身に多く含まれていますので、購入するときには腹側を選ぶようにすると良いでしょう。
塗って焼くだけなのにおいしくお魚を頂けます。
<材料(4人分)>
- ぶり切り身・・・4切
- ゆず胡椒・・・・小さじ4
<作り方>
- ぶりの水気をふき、1切に対しゆず胡椒小さじ1を全体に塗る。残りも同様にする。
- 魚焼きグリルで焼き色がつくまで焼く。焦げやすいので弱めの中火で焼く。
<栄養素(一人分あたり)>
エネルギー:207kcal
コレステロール:58mg
食物繊維:0.2g
脂質:14.1g
食塩:0.9g
煮る・ブリ大根
定番料理と言えば「ブリ大根」もあります。
煮物は汁まで摂取することで流出したEPAやDHAも摂取できますので、効率の良い摂り方と言えます。
茹でる・ブリしゃぶ
茹でる、しゃぶしゃぶの調理法は、EPAやDHAが流れ出てしまうのであまり良い調理法とはいえない面があります。
しかし、あまりに脂ののりが良い場合にはしゃぶしゃぶも良いでしょう。
脂がのっているということはそれだけエネルギーもかさんでいきますから、適度な摂取には良い調理法だと思われます。
さっぱりと食べられることと、あわせて野菜類を追加すると良いでしょう。
ブリにもビタミンEは豊富ですが、緑黄色野菜にはβ-カロテンやビタミンEといった抗酸化作用を持った栄養素が豊富です。
なおかつこれらは脂溶性ビタミンで油脂と一緒に摂ると吸収率が高まりますから、ブリの脂が活かされるのです。
まとめ
天然のものだけでなく養殖も増え、ブリは脂ののった身が比較的長い期間楽しめる魚となりました。
養殖ものでは、ブリの魅力である脂部分が強調されていて、少しくどい場合もありますから、料理法で上手に脂を落としながら適度に楽しむのが良いかもしれません。
いずれにしてもブリがEPAやDHAの摂取源として、「脂がのっている魚」の代表格であることには、今も昔も変わりがないようです。
ブリ(鰤)以外にもEPAとDHAを多く含むお魚はたくさんあります。いろいろなお魚を食べることで飽きずにEPAとDHAを摂ることができます。
DHA・EPAが豊富ないわし(鰯)の上手な食べ方と栄養素・成分
DHA・EPAが豊富なアジ(鯵)の上手な食べ方と栄養素・成分
DHA・EPAが豊富なサバ(鯖)の上手な食べ方と栄養素・成分
DHA・EPAが豊富なサンマ(秋刀魚)の上手な食べ方と栄養素・成分
DHA・EPAが豊富なマグロ(鮪)の上手な食べ方と栄養素・成分
DHA・EPAが豊富なサケ(鮭)の上手な食べ方と栄養素・成分
DHA・EPAが豊富なカツオの上手な食べ方と栄養素・成分
DHA・EPAが豊富なほっけの上手な食べ方と栄養素・成分
この記事を書いた管理栄養士さん
名前:Chika
保有資格:管理栄養士
フリーの管理栄養士。食関連資格の教材作成や専門学校講師などの仕事をしています。