健康診断の検査項目に「中性脂肪」または「「トリグリセライド(TG)」という項目があります。
あなたが健康診断でこれらの数値が高いと分かったとき、「中性脂肪は下げた方がいいの?」「そもそも中性脂肪って何?」とあまりピンと来ない方も多いと思います。
ここでは、
- 中性脂肪って何だろう?
- 中性脂肪って、体のどこにどんな形であるんだろう?
- 中性脂肪って体脂肪と同じなのかな?体脂肪を減らせば中性脂肪も減るのかな?
といった疑問にお答えすべく、中性脂肪がどんなものなのかをわかりやすく解説します。
では、中性脂肪の役割や基礎知識を一緒にみていきましょう。
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中性脂肪とは
中性脂肪は、別名「トリグリセライド(TG)」とも言われています。体の脂肪組織の中に最も多く含まれているのが中性脂肪になります。
これは脂質の一つで、「グリセロール」と「脂肪酸」で構成されています。
脂肪酸には様々な種類があります。大部分は、炭素数の多い長い鎖である「長鎖脂肪酸」になります。
油などの脂質を食べると、体内で消化・吸収され、再び中性脂肪として存在します。すぐにエネルギーとして使われない中性脂肪は、脂肪細胞で蓄えられます。
中性脂肪は、糖質やたんぱく質と比べると2倍以上のエネルギーを持っています。他の栄養素に比べて、コンパクトにエネルギーをたくわえることができるのです。
中性脂肪は私たちが体温を維持したり、体を動かすために活躍してくれます。また、脂質以外の糖質やたんぱく質も摂りすぎると体内で中性脂肪になり、脂肪細胞にたくわえられます。
中性脂肪の役割
中性脂肪は、私たちが生きて行く中で重要な役割を持ち、なくてはならない存在です。
中性脂肪の主な役割は
- エネルギー源
- 体温維持
- 臓器の保護
の3つになります。
エネルギー源
私たちが自由に体を動かしたり、体温を維持するためには、エネルギーが必要です。
中性脂肪1gは約9kcalのエネルギーを持ちます。一方、糖質やたんぱく質1gは約4kcalであるため、これらの2倍以上のエネルギーを持ちます。
このように、中性脂肪は単位あたりで多くのエネルギーを持ち、運搬や貯蔵が容易にできます。そのため、理想的な燃料と言えます。
中性脂肪はエネルギーを体にたくわえる性質をもつため、「貯蔵脂質」とも呼ばれています。
体温維持
中性脂肪が皮下の脂肪細胞にたまると皮下脂肪となります。
皮下脂肪は保温効果が大きく、体内から発生した熱を外に逃がしにくくします。
太った人が冬の寒さに強いのは、皮下脂肪によって保温効果が高まっているためです。
臓器の保護
皮下脂肪や内臓脂肪は、何かにぶつかったり転んだときに、クッションになって体を守ってくれます。
特に、心臓、肝臓、腎臓、脳、脊髄など重要な器官を保護する大切な役割を担っています。寝たきりで皮下脂肪が少ない方は、皮膚と骨がこすれて潰瘍ができやすくなります。
体脂肪・内臓脂肪・皮下脂肪は全て中性脂肪?
体脂肪・内臓脂肪・皮下脂肪・中性脂肪など、「~脂肪」と付くものがたくさんありますよね。これらはどのような違いがあるのかみていきましょう。
「体脂肪」とは、体内にある脂肪をすべて指します。
最近、体重計でも体脂肪率まで測定できるものが多くありますよね。体脂肪率は、全体重のうち体脂肪が占める割合を表しています。
脂肪は、主におなか周り(腹腔)か皮下につきます。
おなか周りの脂肪は「内臓脂肪」、皮下の脂肪は「皮下脂肪」と付く場所の違いによって呼び方が分けられています。
脂肪は脂肪細胞がたくさん集まった組織になります。その脂肪細胞の中に中性脂肪がたくわえられています。
つまり、体脂肪、内臓脂肪、皮下脂肪は、どれも中性脂肪から構成されているのです。
内臓脂肪の特徴
内臓脂肪は、腹腔内の腸間膜についている脂肪のことを指します。臓器がずれたり、ぶつからないように、クッション材のような役割をしています。
内臓脂肪の組織は、皮下脂肪に比べて中性脂肪をたくわえやすく、さらに燃焼しやすいという特性を持っています。
また、直接肝臓に流れる脂肪組織でもあります。脂肪細胞は体に作用するホルモンに似た物質を分泌する働きを持っています。
内臓脂肪は、皮下脂肪に比べてその物質を分泌しやすいことも知られています。そのため、内臓脂肪が悪い状態(中性脂肪がたまり、脂肪細胞が肥大化した状態)では、体に悪い影響をあたえる物質が多く分泌されます。
また、メタボリックシンドロームの発症には、皮下脂肪より内臓脂肪が大きく関係していることもわかっています。
内臓脂肪は、腹部に脂肪がつきます。そのため、内臓脂肪が多い人はお腹がポッコリと出ている体形になり、「りんご型肥満」と呼ばれています。
りんご型肥満は、女性より男性に多くみられるのが特徴です。
皮下脂肪の特徴
皮下脂肪は、皮膚と筋肉の間にある脂肪です。体温を外へもらさないようにする保温材や外部からの衝撃を和らげるクッション材としての役割を果たしています。
皮下脂肪は、男性より女性につきやすいと言われています。その理由は、女性ホルモンであるエストロゲン(卵胞ホルモン)が皮下に脂肪をため込むように働くためです。
内臓脂肪に比べると、皮下脂肪は落としにくいことも分かっています。ダイエットを始めると、まずは内臓脂肪から落ちるため、皮下脂肪を落とすには時間がかかります。
また、内臓脂肪は臓器の周りについているため、自分でつまむことができません。一方、皮下脂肪はつまむことができます。自分で、どこに皮下脂肪が多くついているかチェックすることができます。
一般的には、下腹部やお尻、太ももにつきやすいため、皮下脂肪型肥満は「洋ナシ型肥満」と呼ばれています。
中性脂肪は血液中や肝臓にもある
中性脂肪は脂肪細胞にたくわえられている他、血液中や肝臓にも存在しています。
脂質(中性脂肪)を食べると、体内で消化・吸収されて再び中性脂肪になります。さらには、糖質やたんぱく質も体内で中性脂肪になることができるのです。
これから、食べ物が体内でどのように中性脂肪として存在するのか見ていきましょう。
油(中性脂肪)を食べると、体内で、中性脂肪は消化酵素によって吸収されやすいように分解されます。吸収された後、再び中性脂肪に合成されて、血液に乗って全身に運ばれます。
一方、体に取り込まれた糖質は、体内で消化・吸収され、ブドウ糖になります。ブドウ糖は、エネルギーとして利用されますが、余ると肝臓に運ばれます。
中性脂肪の生産工場である肝臓は、運ばれてきたブドウ糖をグリセロールにします。グリセロールと遊離脂肪酸を結合させ、新たな中性脂肪を作り出します。
同様に余ったたんぱく質も一旦ブドウ糖になり、同じルートで中性脂肪になります。
このように、中性脂肪は、脂肪細胞にたくわえられているものだけではないのです。肝臓で新たに合成されたり、血液中に流れているのです。
まとめ
中性脂肪の基礎知識についてお話ししてきました。少しは、中性脂肪について理解を深めていただくことはできたでしょうか。
脂肪は、悪者だと思われがちですが、私たちの体を守る大切な役割をしています。寒い冬でも、体温を維持できることや転んでも内臓が守られているのは、脂肪のおかげです。
そのため、脂肪は少なすぎても、多すぎても良くないのです。
脂肪はつく場所によって「内臓脂肪」と「皮下脂肪」に区別されました。そして、それらにはそれぞれに特徴があることも分かりましたね。
さらには、中性脂肪は、脂質以外からも作られるの?!と思った方も多かったのはないでしょうか?
糖質やたんぱく質を食べ過ぎでも中性脂肪は増えてしまうのです。
今回、中性脂肪とは何かを知ることで、中性脂肪を下げる第一歩を踏み出せたと言っても過言ではありません!
次は、なぜあなたの中性脂肪が増えてしまったのか?その原因について理解しましょう。
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中性脂肪が高い!あなたの中性脂肪が増えた原因
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◆参考文献◆
- 「よくわかる中性脂肪」 栗原毅 ㈱学習研究社 2009
- 「図解入門 よくわかる 栄養学の基本としくみ」 中屋豊 ㈱秀和システム 2012
- 「患者のための最新医学 脂質異常症 最新の食事療法」 寺本民生 高橋書店 2016
この記事を書いた人
保有資格:管理栄養士
大学・大学院で生活習慣病について研究、卒業後は製薬会社に勤務。
栄養学に興味を持ち、管理栄養士資格を取得。
現在はダイエット向けの食事指導を行っている。