中性脂肪が高いけど、どうして中性脂肪が高くなってしまったのか思い当たらない方もおられると思います。
あなたのお腹はポッコリとでていませんか?
中性脂肪が高い方は、おなか周りの「内臓脂肪」がたまっている方が多くみられます。
内臓脂肪と中性脂肪はどう関係しているの?どうして中性脂肪が高いの?と疑問に思いますよね。
これから、中性脂肪が増えてしまった原因についてお伝えしていきます。
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中性脂肪の数値が高いのは、血中の中性脂肪が多いということ
健康診断で、中性脂肪の数値が高いということは何を意味しているのでしょうか?
健康診断は空腹時に行うことが多いですよね。それにはちゃんとした理由があります。
食べた後に血液検査すると直前に食べたものが血液中の成分に影響してしまうからです。
血液中の中性脂肪には、「外因性トリグリセリド」と「内因性トリグリセリド」2種類あります。
外因性トリグリセリド
食事で摂った脂質が、腸で吸収されて血液中に中性脂肪として存在します。
内因性トリグリセリド
脂肪細胞にある中性脂肪は、遊離脂肪酸とグリセロールに分解されます。
エネルギーとして使われなかった余分な遊離脂肪酸は、肝臓に運ばれます。そして、再び中性脂肪として合成され、血液中に存在します。
外因性トリグリセリドは、食事の内容によって量がかわってきます。そのため、食事の影響を受けないように、空腹時に血液検査をすることが主流になっています。
したがって、空腹時の血液検査では、内因性トリグリセリドを測定していることになります。
血液検査の結果で中性脂肪の数値が高いということは、肝臓で合成された中性脂肪が血液中に多いことを意味しています。
血中の中性脂肪が高くなる原因の一つは肥満
肥満になると脂肪細胞に中性脂肪がどんどんたまり、脂肪細胞が肥大化していきます。
脂肪細胞にある中性脂肪は、血液中に放出されるとき、リパーゼ(脂質の消化酵素)によって「遊離脂肪酸」と「グリセロール」に分解されます。
遊離脂肪酸は血液中から筋肉に運ばれ、エネルギーとして燃焼されます。
エネルギーとして使われなかった遊離脂肪酸は、血液中を流れて肝臓へ運ばれます。
肝臓で、遊離脂肪酸はブドウ糖と手をつなぎ、再び中性脂肪へと合成されて、血液中へ流れていきます。
肥満になるとエネルギーとして利用されない遊離脂肪酸が多くなり、肝臓で中性脂肪の合成が増加します。
その結果、肥満の方は、血中の中性脂肪が高くなってしまうのです。
また、肥満には、「内臓脂肪型肥満」と「皮下脂肪型肥満」があります。
「内臓脂肪型肥満」の方が代謝が盛んであるため、血中の中性脂肪に影響しやすいです。
また、中性脂肪が高い人の中には、肥満が原因でない場合もあります。その方は、遺伝子が原因である場合が多く「原発性高脂血症」と言われています。
遺伝子異常が明らかになっているものと原因不明なものがあります。
原発性高脂血症は、生活習慣などの環境要因が加わって発症することが多いです。そのため、生活習慣に気を付けることが大切になってきます。
内臓脂肪がたまる原因
なぜ、内臓脂肪がたまってしまうのでしょうか。
摂取エネルギー(食事によって体内に取り込まれたエネルギー)と消費エネルギー(基礎代謝や運動などにより消費されるエネルギー)が同じであれば、太ることも痩せることもありません。
脂肪が体にたまるということは、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回っているからです。
摂取エネルギーが高くなるのは、食べ過ぎ、飲み過ぎが考えられます。
一方、消費エネルギーが低くなるのは、基礎代謝の低下、運動不足などが考えられます。
基礎代謝量とは、呼吸や内臓などの生命維持するためのエネルギーのことで、たとえ寝ているだけでも消費されるエネルギーのことです。
この基礎代謝量は、年齢とともに低くなっていきます。また、筋肉量が少ないほど基礎代謝量は低くなります。
内臓脂肪は、皮下脂肪に比べてたまりやすいのも特徴です。そのため、摂取エネルギーが消費エネルギーを上回り、エネルギーとして使われず余ったものは、中性脂肪となり内臓脂肪として蓄積されるのです。
以上をまとめると、内臓脂肪がたまる原因は、摂取エネルギーの過多(食べ過ぎ、飲み過ぎ)、消費エネルギーの低下(加齢、運動不足)となります。
それに加えて、遺伝子、性ホルモンなどの影響で、内臓脂肪がたまりやすい人もいます。
内臓脂肪が危険で問題視される理由
「中性脂肪とは?体脂肪・内臓脂肪・皮下脂肪との違いは?」でもご説明した通り、脂肪は私たちの体にとって大切な働きをしてくれる、なくてはならない存在です。
しかし、たまりすぎると逆に体にとって悪い影響をもたらします。
特に、内臓脂肪が増えすぎると、脂質異常、血圧上昇、高血糖などがみられ、重症化すると動脈硬化を引き起こしてしまいます。
アディポサイトカインのバランスが崩れる
脂肪細胞は、ただエネルギー(中性脂肪)をたくわえる貯蔵庫というイメージを持っている人が多いのはないでしょうか?
実は、脂肪細胞は、中性脂肪をたくわえる他にも様々なホルモンを分泌しています。
脂肪細胞が分泌するホルモンは総称して「アディポサイトカイン」と呼ばれています。
このアディポサイトカインは、大きく2つに分けることができます。
1つは体に良い働きをする「善玉アディポサイトカイン」であり、もう1つは、体にとって悪い働きをする「悪玉アディポサイトカイン」です。
善玉には、傷ついた血管などを修復して動脈硬化を予防する「アディポネクチン」や食欲を抑制する「レプチン」があります。
もう一方の悪玉には、血中からブドウ糖を取り込む作用を妨げる「TNF-α」、血圧を上昇させる「アンジオテンシノーゲン」、血液を固まりやすくする「PAI-1」などがあります。
正常であれば、この善玉と悪玉のアディポサイトカインがバランスよく分泌され、体の機能を維持してくれています。
しかし、中性脂肪がたくさん脂肪細胞にたまり、肥大化してしまうとこのバランスが崩れてしまいます。
悪玉アディポサイトカインが多く分泌され、一方で善玉アディポサイトカインの分泌が少なくなります。
そのため、脂肪が増えすぎると、血糖値や血圧の上昇、脂質異常になりやすいのです。
また、皮下脂肪より内臓脂肪の方がアディポサイトカインの分泌が盛んに行われています。
そのため、内臓脂肪型の肥満はより体に悪影響を与え、動脈硬化のリスクが上昇してしまいます。
中性脂肪を下げるには内臓脂肪を減らしましょう
ここでもう一度、中性脂肪が血液中に存在する流れを復習しましょう。
- 脂肪細胞にある中性脂肪は、「遊離脂肪酸」と「グリセロール」に分解され、血液中に放出されます。
- エネルギーとして使われなかった遊離脂肪酸は、肝臓に流れていきます。
- そして、肝臓で再び中性脂肪に合成され、血中へと流れていきます。
内臓脂肪は、皮下脂肪に比べて代謝が活発であるため、この一連の流れが盛んに行われます。そのため、内臓脂肪の過多は中性脂肪の高値に影響してきます。
また、内臓脂肪型肥満の人は、脂質異常(中性脂肪の高値も含む)・高血圧・高血糖になりやすいです。
そして、内臓脂肪型肥満の人は、内臓脂肪を減らすことで、血中脂質、血圧、血糖値の数値を改善できることも分かっています。
実際に、特定保健指導で、内臓脂肪を減らすことによって、血中脂質、血圧、血糖値の数値を改善する取り組みが行われています。
中性脂肪を下げるためには、まずは内臓脂肪を減らしていくことがポイントになります。
まとめ
今回、中性脂肪が高い原因を知ることで、中性脂肪を下げる道筋を見つけることができましたでしょうか。
内臓脂肪がたまってお腹がポッコリとでている人は中性脂肪が高い場合が多いです。その方は、内臓脂肪を減らすことで中性脂肪を下げることができます。
内臓脂肪がたまる原因は、「摂取エネルギーが消費エネルギーを上回っている」からでしたね。
内臓脂肪を減らすために、摂取エネルギーを低く、消費エネルギーを高くする生活を心がけていきましょう!
「えー、それってダイエットしなきゃってことだよね。無理無理!」とか思った方もいるかもしれませんね。
でも、そう簡単にあきらめて欲しくありません。なぜなら、様々な病気になるリスクがあるからです。
中性脂肪が高いとどうなるのか?どんなリスクがあるのかを知っておきましょう。
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◆参考文献◆
- 「よくわかる中性脂肪」 栗原毅 ㈱学習研究社 2009
- 「図解入門 よくわかる栄養学の基本としくみ」 中屋豊 ㈱秀和システム 2012
- 「最新版 本気で治したい人のメタボリックシンドローム」 宮崎滋 ㈱学研パブリッシング 2013
- 「エッセンシャル臨床栄養学 第7版」 佐藤和人 他2名 医歯薬出版㈱ 2014
- 中性脂肪(トリグリセリド,TG) | 一般財団法人|日本健康増進財団
この記事を書いた人
保有資格:管理栄養士
大学・大学院で生活習慣病について研究、卒業後は製薬会社に勤務。
栄養学に興味を持ち、管理栄養士資格を取得。
現在はダイエット向けの食事指導を行っている。