健康診断で中性脂肪が高値と分かったけど、今は体の具合が悪くないから大丈夫!と思っている方いませんか?
そんな方に、特に読んでいただきたい内容になります。
中性脂肪が高いと体にどんな悪い影響があるのか、どんな病気になるリスクがあるのかを理解していただけたらと思っています。
では、中性脂肪が高いとどのような病気になりやすいのか見ていきましょう。
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脂肪肝
肝臓は、アルコールや薬物の代謝、脂質の代謝や生産など、体にとって大切な働きをしてくれる臓器です。
中性脂肪が高値になると、肝臓に脂肪がたまる「脂肪肝」になるリスクが高いことが分かっています。
脂肪肝とは、肝臓の細胞の中に中性脂肪がたまっている状態です。肝臓の細胞の30%以上が脂肪で占められていることを指します。
脂質を食べると小腸で吸収され、中性脂肪となり全身に運ばれます。中性脂肪の一部は肝臓にも流れていきます。
中性脂肪は、①肝臓、②内臓脂肪、③皮下脂肪という順番でたまりやすいです。そのため、中性脂肪が高い人は脂肪肝になるリスクが高いのです。
脂肪肝は、ただ肝臓に脂肪がついただけと思いがちですが、悪化すると肝硬変や肝がんを起こすケースもあります。
脂質異常症
脂質異常症とは、HDLコレステロール、LDLコレステロール、中性脂肪のいずれかが正常値より多かったり、少なかったりする状態のことです。
それぞれについて詳しく見ていきましょう。
HDLコレステロール
「善玉コレステロール」と呼ばれています。HDLコレステロールは、体内にあるコレステロールを回収して肝臓に運ぶ働きをします。
そのため、HDLコレステロールが少ないと体内に余分なコレステロールが付着してしまいます。
LDLコレステロール
「悪玉コレステロール」と呼ばれています。LDLコレステロールは、肝臓からコレステロールを全身に配る働きをします。
そのため、LDLコレステロールが多いと血管などにコレステロールを付着させ、血管を狭めたり塞いだりすることで動脈硬化を起こすリスクが高くなります。
中性脂肪
中性脂肪は直接血管に付着したりはしません。
中性脂肪が高いと、LDLコレステロールを増加させ、一方でHDLコレステロールを減少させてしまいます。
高血圧
「塩分の摂りすぎ」が高血圧の原因になるということを知っている方は多いと思いますが、「中性脂肪が高い」ことも高血圧と関係があります。
増加した中性脂肪は、脂肪細胞にたまります。すると脂肪細胞が肥大し、「アディポサイトカイン」の分泌異常がおきます。
アディポサイトカインについては、前回の記事「中性脂肪が高い!あなたの中性脂肪が増えた原因」で詳しく説明しています。
「アディポサイトカイン」は、簡単に言うと脂肪細胞から分泌される物質です。
肥大化した脂肪細胞からは、体にとって良い働きをする「善玉」のアディポサイトカインが減少します。
「善玉」が減ることで、血管の修復機能が低下し、血管の弾力性が減少して血圧上昇につながります。
一方、「悪玉」のアディポサイトカインである「アンジオテンシノーゲン」の分泌が増加します。
アンジオテンシノーゲン」は「血管を収縮させて血圧を上げる働きをします。
このように、中性脂肪が高いと脂肪細胞が肥大化する→アディポサイトカインの分泌異常がおこる→血圧が高くなるという流れで高血圧になりやすいのです。
高血糖
脂肪と糖とは、どう関係があるのか?と疑問に思う人もいることでしょう。
実は、中性脂肪が高いと血糖値も高くなるリスクがあります。
血糖値とは、血液中に含まれるブドウ糖のことを指しています。
血糖値は、食事をすると一時的に上昇しますが、時間がたつと、再び正常の血糖値に戻ります。しかし、正常値まで戻らず、血糖値が高い状態が続くと糖尿病と診断されます。
中性脂肪は、「遊離脂肪酸」と「グリセロール」に分解されます。グリセロールは、血液によって肝臓まで運ばれます。そこで、グリセロールはブドウ糖に合成されます。
そのため、中性脂肪が高い人はブドウ糖の合成が盛んに行われ、血糖値が高くなりやすいのです。
もう1つ、血糖値を一定の濃度を保つように働くホルモンである「インスリン」の働きが悪くなることで、高血糖になる場合があります。
こちらは、高血圧と同じ流れで、肥大化した脂肪細胞から分泌されるアディポサイトカインの分泌異常が原因です。
アディポサイトカインの「善玉」物質が減少し、「悪玉」物質が増加することで、インスリンの作用が低下します。
そのため、高くなった血糖値が正常値まで戻ることができず、高血糖になってしまいます。
メタボリックシンドローム
「メタボリックシンドローム」とは一度は耳にしたことがある言葉だと思います。
メタボリックシンドロームとは、上記3つで取り上げた脂質異常症、高血圧、高血糖などの生活習慣病に複数なっている、またはなりやすい状態のことです。
メタボリックシンドロームと診断される第一条件の検査項目として「腹囲」があります。
腹囲によって、内臓脂肪のたまり具合を確認します。腹囲が基準値以上の場合、「内臓脂肪型肥満」となります。
内蔵型肥満に加えて、脂質異常、高血圧、高血糖のうち、2つ以上あてはまるとメタボリックシンドロームと判定されます。
メタボリックシンドロームの状態を放っておくと、次の項目でお伝えする「動脈硬化」が進行していきます。
動脈硬化が知らない間にひどくなると、脳血管疾患や心疾患など命にかかわる大きな病気を引き起こしてしまいます。
動脈硬化
動脈硬化とは、血管が弾力性を失いかたくなったり、血管の内側にコレステロールなどが付くことで血管が狭くなっている状態のことを指します。
動脈硬化になる原因は、先ほどからお話している、脂質異常、高血圧、高血糖です。
これらによって血管に負担がかかり、傷ができてしまうのです。その傷にコレステロールが入り込むと、血管壁が膨らみ、血液の通り道が狭くなり動脈硬化になります。
動脈硬化が進むと、血液の流れが悪くなり、血圧が上がり、動脈硬化が進むという悪循環が起こるのです。
動脈硬化が怖い理由は、進行していくと「狭心症・心筋梗塞、脳卒中」と命にかかわる重要な疾患になるリスクが高くなるためです。
狭心症は、心臓の血流が一時的に制限されます。そのため、胸が締め付けられたような痛みに襲われます。
心筋梗塞は、血管に血栓(血の塊)が生じ、血液が完全にストップします。直ちに、応急処置が必要となります。
脳卒中は、脳の血管で発生する病気の総称です。脳の血管が動脈硬化になると、脳の血管が破れて「脳内出血」を起こしたり、脳の血管が詰まり、酸素や栄養が届かず「脳梗塞」を引き起こしてしまいます。
まとめ
中性脂肪が高いと様々な病気のリスクがあることを理解していただけたでしょうか。
中性脂肪が高いと言われても、今はどこも調子が悪くないから放っておこうと思ってしまっては、危ないですよね!
中性脂肪が高いと、「脂質異常」「高血圧」「高血糖」になりやすく、さらに悪化すると「動脈硬化」につながります。
血管は実際に目に見えないので、動脈硬化が進んでいることに気づかないのも怖いですよね。
今から中性脂肪を下げることを意識して行動することで、上記であげたような病気を予防することができます。
後々後悔しないためにも、中性脂肪を減らす生活をしていくことが必要です。
次の記事では、中性脂肪を減らすために何をすれば良いのかを詳しくご紹介します。
次の記事:中性脂肪を下げるには何をすべき?中性脂肪を減らすために必要な3つのこと
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中性脂肪を下げるには何をすべき?中性脂肪を減らすために必要な3つのこと
「中性脂肪の数値が高いけどどうすればいいの?」「中性脂肪を下げるにはどうしたらいいの?」と悩んでしまう人もいますよね。 中性脂肪が高いのなら、脂肪というイメージから油の食べる量を減らせばいいのかなと思 ...
◆参考文献◆
- 「よくわかる中性脂肪」 栗原毅 ㈱学習研究社 2009
- 「図解入門 よくわかる 栄養学の基本としくみ」 中屋豊 ㈱秀和システム 2012
- 「エッセンシャル臨床栄養学 第7版」 佐藤和人 他2名 医歯薬出版㈱ 2014
- 「患者のための最新医学 脂質異常症 最新の食事療法」 寺本民生 高橋書店 2016
この記事を書いた人
保有資格:管理栄養士
大学・大学院で生活習慣病について研究、卒業後は製薬会社に勤務。
栄養学に興味を持ち、管理栄養士資格を取得。
現在はダイエット向けの食事指導を行っている。