トマトもリンゴのように、「トマトが赤くなると医者が青くなる」ということわざを持つ、古くから健康効果が知られている野菜です。
緑黄色野菜として栄養素を豊富に含むだけでなく、機能性成分も多く、注目を集めています。
また彩りもよくさまざまな料理に使えることから食卓での登場回数が多い点でも優秀な食材です。
どちらかというと美肌効果など女性にうれしい効果を取り上げられることの多かったトマトですが、中性脂肪対策においてもどうやら働きかけをしてくれるということがわかってきました。
今日はそんなトマトの優秀さをご紹介したいと思います。
中性脂肪だけじゃない!トマトのすごい健康効果
トマトは多くのビタミン類を含んでいます。体内でビタミンAとして働いてくれるβ-カロテン、脂溶性ビタミンの一種で「若返りのビタミン」とも呼ばれるビタミンE、水溶性ビタミンのビタミンCのいずれも含んでいます。
この3種のビタミンは「ビタミンACE(エース)」とセットにされる、いずれも抗酸化作用の強い栄養素です。
抗酸化作用は活性酸素の害から私たちを守ってくれるため、抗がん作用などが期待できます。
中性脂肪値が高いなど、血中脂質バランスが崩れている場合には脂質の酸化も気になるところですので、トマトの持つ抗酸化作用は動脈硬化予防として注目しておきましょう。
さらにトマトが抗酸化作用で優れているのは、リコピンという色素を持っているから。リコピンはβ-カロテン以上に抗酸化力を持つと言われています。
このようにトマトは美容効果のみならず生活習慣病予防の観点でも期待できる野菜なのです。
酸味をもたらすクエン酸には疲労回復効果が、完熟トマトでうま味を醸し出すグルタミン酸には脳の機能を高める効果が、香り成分のピラジンには血栓予防効果が知られています。
生活習慣病予防で大切な施策の一つにメタボリックシンドローム対策があります。生活習慣病の一歩手前で警鐘を鳴らしてくれるメタボリックシンドローム。ここで改善できるかどうかが別れ道。
このメタボリックシンドローム対策に、どうやらトマトが役立つらしいということが最近の研究でわかってきました。
トマトに含まれる13オキソODAとは
トマトがメタボリックシンドローム対策にも役立つと考えられているのは、トマトODAとも呼ばれる、「13オキソODA」の存在。
13オキソODAとは不飽和脂肪酸の一種で、トマトにも含まれています。
この13オキソODAを摂取すると肝臓での中性脂肪量の上昇を抑制するという動物実験の結果が、京都大学の河田教授・金研究員らの研究によって示されました。
参考:トマトから脂肪肝、血中中性脂肪改善に有効な健康成分を発見:効果を肥満マウスで確認
これにより動物実験段階ではありますが、13オキソODAによって脂肪燃焼が高まることで脂肪肝や脂質異常症のリスクを下げ、メタボリックシンドローム対策につながることが示唆されたのです。
さらにこの研究結果の裏付けとなる研究が、東京医科歯科大学大学院の寺内准教授らの研究グループによって示されました。
ミドルエイジの女性にトマトジュースを1日2回摂取してもらったら、血清中性脂肪が低下するという結果が得られたのです。
動物実験のみならずヒトでも同様の効果が認められ、トマトの持つ「13オキソODA」の効果がさらに期待されるものとなりました。
13オキソODAをたっぷり摂るならジュースがオススメ
トマトの良さがわかったら、たっぷりトマトを食べようと思われるかもしれませんが、実際に毎日毎日トマトを食べるといっても、その量には限界があります。
トマトジュースには13オキソODAが多く含まれることが京都大学の河田教授らの研究結果からも示されていますので、トマトジュースの摂取を習慣化してみるもの良いでしょう。
ただしトマトジュースで気をつけたいことが一つ。それは塩分です。
トマトジュースには有塩のものと無塩のものとがあります。有塩のものの方が「味がしまっていて飲みやすい」と感じる方も多いのですが、実は結構な塩分含有量。
例えば血清中性脂肪が低下する結果の得られた東京医科歯科大学大学院の寺内准教授の研究では、トマトジュースを1回200ミリリットル、1日に2回飲んでいました。
これをもし有塩トマトジュースで摂取してしまうと、それだけで食塩を約1.2g摂取することになってしまうのです。
ただでさえ日本人は食塩摂取量が過剰気味。過剰なナトリウム摂取は高血圧症や胃がんといった他の生活習慣病のリスクを高めてしまいます。
健康を意識してトマトジュースを飲んでいるのにほかの疾病を発症するなんて本末転倒!ぜひお気を付けください。
★トマトジュースを使って作れる簡単スープレシピ
新たなトマトの使い方「塩トマト」
トマトはジュースで摂らなくては意味がないのかというと、そんなことはありません。
13オキソODAは皮の部分に多いので、生のトマトから摂取を期待する場合には皮ごと調理しましょう。
そこで話題になっているのが「塩トマト」です。
塩トマトといっても育成時に水分を絞って甘みを凝縮させたトマトのことではありません。ここでいう塩トマトとは、トマトを塩とはちみつに漬けたものです。
塩分濃度を5%くらいまで濃くして作る場合には、トマトをみじん切りにして調味料のように使うことができます。そこまで塩分濃度を濃くせず、1%程度で作る場合には一口サイズにして甘みの凝縮した素材として、トマトを楽しむことができます。
完熟したトマトの持つグルタミン酸は、いわゆるうま味成分。私たちが日頃出汁を取るのに使う昆布などに含まれている成分と同じ。うま味がしっかりあると、薄味でもおいしく味わうことができます。
つまり、トマトは素材としてだけでなく、調味料として楽しむにしても適した食材なのです。
まとめ
トマトについて知れば知るほど、「トマトが赤くなると医者が青くなる」ということわざには偽りがないことを思い知らされる、健康効果でしたね。
日本で主流のトマトは「桃太郎」という品種で、色がピンク系でやや薄く、生食されることが多いものです。
リコピンやグルタミン酸の効果を期待するのであれば、赤みの強い調理系のトマトやミニトマトも上手に活用してみてください。
品種や加工品などが多いのもトマトの魅力の一つ。毎日の食卓にも取り入れやすいと思いますので、習慣化させてみてください。
★トマトを使ったレシピ例
この記事を書いた管理栄養士さん
名前:Chika
保有資格:管理栄養士
フリーの管理栄養士。食関連資格の教材作成や専門学校講師などの仕事をしています。