魚はなんとなく身体によいイメージがある、という方も多いのではないでしょうか。魚の種類によっても栄養価が異なり、色々な面で私たちの健康を支えてくれています。
その中でも、今回は中性脂肪を下げるために役立つ魚の情報をお伝えしたいと思います。
魚油には中性脂肪を低下させる作用があります。その中に含まれているDHA、EPAといった脂肪酸にも中性脂肪を下げる働きが認められていて、これらを関与成分とした特定保健用食品も許可されています。
では、DHAもEPAもサプリメントで摂ればいいのでは?と思われるかもしれませんが、これらは副作用の報告や、大量摂取において危険性が示唆されていることもあり、(魚油は1日3g以上で危険性あり、米国FDAではDHA、EPAのサプリメントからの摂取は合わせて1日2gを超えないようにとされています。)食事から摂取するほうが安全と言えます。
このことからも、中性脂肪を下げたい方にとって、魚のおかずは強い味方となってくれますね。
DHA、EPAを多く含む魚
脂肪酸組成表を見てみると、生の可食部でDHA、EPAを多く含むものは、以下の通りです。()内は食品可食部100g中に含まれている量です。
<DHA>
- たいせいようさば (2.3g)
- ぶり成魚 (1.7g)
- はまち養殖 (1.7g)
- さんま (1.7g)
<EPA>
- たいせいようさば (1.6g)
- やつめうなぎ (1.5g)
- まいわし (1.2g)
- かたくちいわし (1.1g)
一般に、青魚に多く含まれると言われるDHA、EPAですが、まさにその通りということがわかるかと思います。
これ以外にも、まぐろの脂身やあゆの内臓などにもDHA,EPAは多く含まれているのですが現実的に食べることを考えると、魚の脂身だけや、内臓だけを食べる人は多くなさそうですし、もしそれを100g食べたとして、たとえDHAやEPAを多く摂取できても、脂質からのエネルギーや、コレステロールの摂取量が適正量としてふさわしくないと考えられます。
そのため、上記にピックアップしたような魚が中性脂肪を下げるために、そして健康的な食事のために役立つと言えるでしょう。
また、上記の魚の加工品である缶詰や干物、またはしめさばや塩さば等にもDHAやEPAは多く含まれています。生の魚からしか摂取できない……と思わずに、ライフスタイルや調理のスキルに応じて、こういった加工品を取り入れていきましょう。
また、青魚以外の魚や、エビやイカ、貝類といった魚介類からもDHA、EPAは摂取できます。しかし、エビやイカはコレステロールが魚より多い傾向があるので、このことに注意してこれらも日々の献立に取り入れて、料理のバリエーションを増やしていくとよいでしょう。
ちなみに肉類にはDHA、EPAはほとんど含まれていないと考えたほうがよいです。中性脂肪を下げるためには、やはり魚油が適していると言えるでしょう。
DHA、EPAの特徴と効率よく摂取する方法
DHAとEPAはともに熱や光、空気で酸化しやすく、過酸化脂質になるので注意が必要です。
過酸化脂質はがんや老化、動脈硬化などを引き起こすとされ、体にとって有毒な物質です。高温で調理すると大気中の酸素と反応してしまうので、揚げ物や炒め物よりも生で食べるほうが良いと言えるでしょう。
しかし、いつもいつも刺身ばかりを食べるわけにもいかないですよね。嗜好や価格、旬なども考慮して、美味しく食べられる方法を取り入れていくということが、一番現実的ではないでしょうか。
魚の調理方法が魚油の疫学的研究に重要である可能性があるとされていますが、現時点で詳細は不明です。ただ、体内の過酸化脂質を減らすためには抗酸化物質が有効とされていますから、抗酸化作用を持つビタミンCやビタミンE,カロテノイド類、ポリフェノール類を多く含む食品も一緒に摂取するとよいでしょう。
これらは野菜や果物に多く含まれています。野菜や果物は食物繊維が摂取できるなど、様々な効果がありますから、これらも積極的に取り入れていきたいですね。
また、一般に敬遠されがちな油ですが、魚油に関しては、中性脂肪低下作用や、虚血性心疾患予防効果が確認されていますから、安心して取り入れましょう。
油を落とすような網焼きの調理方法は、油分をカットできることで知られていますが、魚油を無駄なく摂りたい場合には、この方法よりも、ホイル焼き等、出て来た油もすべてお皿に盛りつけられるような料理のほうがよいと考えられます。フライパンで焼くソテーでも、出て来た油分を活かして味付けのソースを作る……という方法もよいかもしれません。
魚を取り入れること
最後になりますが、中性脂肪を下げるために大切なことは、魚を食べること・DHA、EPAを摂取することだけではありません。適正体重にするための適正なエネルギー摂取をはじめ、糖質やタンパク質、脂質など、バランスよく栄養素を摂取することも大切です。
n-3系不飽和脂肪酸の積極的な摂取もガイドラインに盛り込まれていますし、大切なことですが、献立全体のバランスや、一日の摂取量にも気を配るようにしましょう。その中に魚を取り入れていくことが、よりよい結果につながっているはずです。
<参考資料>
e-ヘルスネット(厚生労働省)
国立健康・栄養研究所HP
食品成分表2015(女子栄養大学出版部)
五訂増補 日本食品標準成分表 脂肪酸成分表編