広告やCMなどで目にしたり耳にしたりする機会の多い「特定保健用食品(トクホ)」。
中性脂肪が高くて気になっている方は、「血中中性脂肪が気になる方へ」「体脂肪が気になる方へ」なんてパッケージに書いてあると、ついつい手が伸びてしまいませんか?
でも、特定保健用食品(トクホ)は健康によいイメージはあるけど、実際どのような食品なのかよく知らないという方も多いのではないでしょうか。
中性脂肪を下げたい方を対象にした特定保健用食品(トクホ)もあります。
今回は「特定保健用食品(トクホ)」について詳しくお伝えてしていきますね。
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特定保健用食品(トクホ)ってどういうもの?
食べ物には「3つの機能性」があると言われています。
1次機能は、人が生きるために必要なカロリーや栄養素などの栄養機能のこと。
2次機能は、食べ物のおいしさを感じる味、色などの見た目、においや香りなどの感覚機能のこと。
3次機能は、食べ物によって、血圧を下げるなどの疾病の予防・回復、体調リズムの調節などの体調調節機能のことです。
特定保健用食品は、この3次機能に注目した食品になります。国が食品のもつ機能性について、「有効性」と「安全性」を評価します。
その科学的根拠をもとにして、保健の用途の表示を許可されたものが「特定保健用食品(トクホ)」となります。
特定保健用食品(トクホ)として認められるには、
- 有効性の科学的根拠が明らかなもの
- 安全性が確認されていること
- 機能成分の定量な把握ができていること
の3つの条件をクリアしなければなりません。
血中中性脂肪や内臓脂肪が気になる人はどのトクホを選べばいい?
特定保健用食品(トクホ)には必ず記載しないといけない項目(栄養成分表示、賞味期限、一日摂取目安量など)がいくつかあります。
その中でも「許可表示」はしっかりと読んで確認しましょう。自分が必要としている機能性の成分が含まれているのか確認する必要があります。
中性脂肪を下げたいと考えている方は、「血中中性脂肪が気になる方へ」または「体脂肪が気になる方へ」と表示されているものを選びましょう。
また、「血糖値と血中中性脂肪が気になる方へ」など、保健用途が複数認められている食品もあります。
トクホを利用する上で知っておくべきこと
特定保健用食品(トクホ)の表示に中性脂肪を減らすことが期待できそうな機能性の記載があると試したくなりますよね。
ただ、効果を期待するあまり、トクホの食品を食べ過ぎないように注意しましょう。トクホの食品に偏って基本である食事のバランスが崩れてしまっては、トクホの効果以前に体調を崩してしまう可能性がでてきます。
特定保健用食品(トクホ)には、必ず「食生活は、主食、主菜、副菜を基本に、食事のバランスを。」という文言が記載されています。
特定保健用食品(トクホ)を利用する際は、基本的な食事に上手にトクホを取り入れることを忘れないようにしましょう。
特定保健用食品(トクホ)には一日の摂取目安量が記載してありますので、その目安量を参考にして適量を摂るようにしましょう。
また、特定保健用食品(トクホ)は、医薬品のように病気を治すことを目的としておらず、あくまでも健康の維持増進を目的とした食品です。
効果を得たいからといって特定保健用食品(トクホ)だけに頼ろうとせず、食生活や生活習慣の改善にプラスするという位置づけでトクホを取り入れるといいでしょう。
血中中性脂肪が気になる方のトクホに利用されている成分
血中中性脂肪が気になる方の特定保健用食品(トクホ)に利用されている成分をご紹介します。
EPA・DHA
EPAは、エイコサペンタエン酸、DHAは、ドコサヘキサエン酸の略記になります。これらは、魚油に含まれる成分で、n-3系脂肪酸(オメガ3脂肪酸)に分類されます。体内で、EPAの一部は、DHAに変換されます。DHAは、特定保健用食品では「中性脂肪値を下げる効果が期待できる」という内容の表示が認められている成分です。DHAは、脂肪酸の合成に関わる酵素のはたらきを抑えることで、血液中の中性脂肪を減少させると言われています。一方、EPAは、血の塊を作るのを抑えて、血液をサラサラにしてくれる効果を持つため、動脈硬化の予防をもちます。
グロビン蛋白分解物
グロビン蛋白分解物は、その名の通りたんぱく質であるグロビンを酵素で分解してできたものです。脂肪の分解酵素である膵リパーゼのはたらきを阻害することで、脂肪の分解・吸収を抑えるはたらきをします。特に、食後の血中中性脂肪の上昇を抑えてくれるため、脂質の高い食事が多い方に、おススメの成分になります。
ベータコングリシニン
大豆に含まれるたんぱく質になります。大豆たんぱく質の全体の20%を占めています。肝臓では、「β-酸化」という脂肪を分解して、エネルギーとして代謝する過程が行われます。ベータコングリシニンは、そのβ-酸化を促進することで、脂肪の燃焼を促進し、脂肪の再合成を抑えてくれるはたらきを持ちます。また、脂肪を便として排泄しやすくするはたらきも持っています。
モノグリコシルヘスペリジン
みかんなどに含まれる「へスぺリジン」にグルコースをくっつけたものになります。モノグリコシルヘスペリジンは、肝臓で行われる、脂肪の合成を抑制します。一方で、脂肪燃焼を行う「β-酸化」を促進します。そのため、血中の中性脂肪を抑えるはたらきを持ちます。
ウーロン茶重合ポリフェノール
ウーロン茶のポリフェノールの成分になります。ウーロン茶は、緑茶と同じ、カメリア・シネンシスの葉から作られます。その茶葉を作る過程で、茶に含まれるカテキンの半分が重合体に変わります。その重合体が、ウーロン茶重合ポリフェノールになります。これは、脂肪を分解する膵リパーゼのはたらきを抑えることで、脂肪の吸収を抑えてくれます。
難消化性デキストリン
とうもろこしでんぷんから作られる水溶性の食物繊維です。難消化性デキストリン5gでレタス1個半の食物繊維に相当します。甘味が少なく、粘性が低く、熱や酸などにも強いため、食品として利用しやすい性質を持っています。そのため、様々なタイプの商品がでています。また、難消化性デキストリンは、多くの生理機能を持ちます。その中でも「整腸作用」、「食後血糖値の上昇抑制作用」、「食後中性脂肪の上昇抑制作用」の3つの効能が特定保健用食品の関与成分として消費者庁に認められています。
体脂肪が気になる方のトクホに利用されている成分
体脂肪が気になる方の特定保健用食品(トクホ)に利用されている成分をご紹介します。
血中中性脂肪が気になる方の特定保健用食品(トクホ)に利用されている成分と同じものもあれば、違うものもありますね。
中鎖脂肪酸
サラダ油などの調理でよく使われる食用油は、長鎖脂肪酸(炭素数14以上)が多いです。中鎖脂肪酸は、炭素数が6~12個と長鎖脂肪酸に比べて炭素数が少ない脂肪酸です。
中鎖脂肪酸は小腸から直接吸収され、筋肉や脂肪細胞などに寄り道せずにそのまま肝臓へ運ばれるため、食べても効率よくエネルギーとして消費される脂肪酸として注目されています。
茶カテキン
カテキンは紅茶や緑茶の渋み成分で、水溶性のポリフェノールになります。
お茶の中でも緑茶に一番含まれており、茶葉の日照時間に比例してカテキンの量も増加することが分かっています。
茶カテキンは、肝臓や筋肉で脂肪の分解や消費を促進するはたらきを持ちます。そのため、脂肪がたまりにくくする手助けをしてくる成分です。
クロロゲン酸類
クロロゲン酸類は、コーヒー豆に多く含まれているポリフェノールの一種です。アスパラガスなどの野菜類にも含まれています。
クロロゲン酸は脂肪の蓄積を抑えるはたらきをもつと言われています。これは、肝臓で脂肪の燃焼をうながすことで、余分な脂肪を体内に蓄積するのを抑えるためです。
りんご由来プロシアニジン
りんご由来プロシアニジンは、りんごにふくまれるポリフェノールの主成分になります。カテキンがいくつもつながった構造をしており、抗酸化作用をもちます。
脂肪の分解・吸収に関わる膵リパーゼの活性を阻害することで、脂肪の吸収を抑えるはたらきをしてくれます。
ウーロン茶重合ポリフェノール
ウーロン茶重合ポリフェノールは、ウーロン茶に含まれるポリフェノールの成分です。
脂肪を分解する膵リパーゼのはたらきを抑えることで、脂肪の吸収を抑えてくれます。
ケルセチン配糖体
ケルセチン配糖体は、ポリフェノール群のひとつであるフラボノイドであり、水溶性の黄褐色の色素成分になります。
たまねぎ、緑茶、りんごに多く含まれる成分で、抗酸化力や抗炎症作用をもつと言われています。
さらに、中性脂肪を分解する「ホルモン感受性リパーゼ」のはたらきを強め、中性脂肪が分解しやすくする手助けをしてくれます。
コーヒー豆マンノオリゴ糖
オリゴ糖とは、ブドウ糖などの単糖が2~10個つながったものになります。特に、コーヒー豆のカスから抽出されたオリゴ糖のことを特に「コーヒー豆マンノオリゴ糖」と呼びます。
オリゴ糖は胃や小腸で消化されにくい難消化性の糖です。腸内まで運ばれると腸内細菌のエサになり、腸内環境を整えてくれます。
また、食べたものが小腸を通過する速度をはやめることで、脂肪吸収を抑えるはたらきもちます。
まとめ
特定保健用食品(トクホ)について、理解を深めて頂くことができましたでしょうか。
特定保健用食品を上手に取り入れれば、中性脂肪を下げる手助けになります。ただし、食事が基本であることは言うまでもありません。
トクホを取り入れることで食事のバランスを乱してしまっては意味がありませんので、その点は十分注意しましょう。
逆に、トクホを取り入れることで意識を変えたり、中性脂肪を下げる食事をすることや運動をすることのモチベーション維持の効果が期待できます。
自分の食生活に取り入れやすいものからはじめてみてはいかがでしょうか。
◆参考文献◆
- 「健康・調理の科学-おいしさから健康へ-」 筑柴恒男 ㈱建帛社 2014
- 「食品機能の表示と科学」 清水俊雄 ㈱同文書院 2015
- 「日経ヘルス サプリメント事典」 日経ヘルス 日経BP社 2011
- 「サプリメント健康事典」 一般社団法人 日本サプリメント協会 ㈱集英社 2015
- 動脈硬化を防ぐおいしいレシピ 新星出版社編集部 ㈱新星出版社 2014
- [トクホ]ごあんない2017年度版
この記事を書いた人
保有資格:管理栄養士
大学・大学院で生活習慣病について研究、卒業後は製薬会社に勤務。
栄養学に興味を持ち、管理栄養士資格を取得。
現在はダイエット向けの食事指導を行っている。