「中性脂肪を減らす」や「血糖値の上昇をゆるやかにする」と書いてある飲料や食品をよく見かけるようになりました。
このような効果を謳っている商品に入っている成分の一つに「難消化性デキストリン」があります。
難消化性デキストリンには、整腸作用、食後血糖値の上昇抑制作用、食後中性脂肪の上昇抑制作用と複数の効能が認められています。
そのため、特定保健用食品(トクホ)や機能性表示食品では、難消化性デキストリンが含まれている商品が数多く販売されています。
特定保健用食品(トクホ)に使われているということは、国が審査を行って効果や安全性が認められている信頼性が高いものということになりますが、難消化性デキストリンって一体どんなものなのでしょうか?
多様な効能をもつ「難消化性デキストリン」について詳しく紹介していきたいと思います。
難消化性デキストリンとはどうのようなもの?
難消化性デキストリンとはどうのようなものか説明していきます。
まず、デキストリンって何でしょうか?
デキストリンは、ご飯などに含まれているでんぷんが、消化酵素や酸などで部分的に分解され低分子化された炭水化物です。
このデキストリンに含まれる消化しにくい成分=水溶性食物繊維が「難消化性デキストリン」です。
つまり、難消化性デキストリンの正体は水溶性食物繊維です。
難消化性デキストリンの原材料はトウモロコシです。トウモロコシのでんぷんを消化酵素であるアミラーゼによって分解して取り出します。
難消化性デキストリンが注目されている理由の一つとしては、日本人の食事が欧米化したことで多くの日本人が食物繊維不足になってきたことがあげられます。
その食物繊維不足を補うことを目的としてトウモロコシから難消化性デキストリンが作られはじめました。
難消化性デキストリン5gでレタス1個半の食物繊維に相当します。
甘味が少なく、粘性が低く、熱や酸などにも強く、食品の見た目や味も変えないという特徴があるので、多くの食品に使われています。
また、安全性もヒト試験によって問題ないことが確認されています。
難消化性デキストリンは体内でどんな働きをするの?
では次に、難消化性デキストリンの体内での作用について説明していきます。
難消化性デキストリンには、次の①~⑤の働きがあります。それぞれご説明します。
- 食後の中性脂肪の上昇を抑制する
- 内臓脂肪を低減させる
- 糖の吸収スピードの遅延作用(食後血糖の上昇抑制作用)
- 整腸作用
- ミネラルの吸収促進作用
①食後の中性脂肪の上昇を抑制する
難消化性デキストリンを食事と一緒に摂ることで、脂肪の吸収を遅延する効果があります。
ヒト試験では、脂肪を含む食事をするときに、難消化性デキストリンが入った飲料を飲むグループと入っていない飲料を飲むグループで比較したところ、難消化性デキストリン入り飲料を飲んだ人の方が、食後の中性脂肪の上昇が抑えられていたという結果が確認されています。
②内臓脂肪を低減させる
こちらもヒト試験で、難消化性デキストリン9g入ったお茶を飲むグループと入っていないお茶の飲むグループとを比較したところ、難消化性デキストリン入りのお茶を摂っていた人の方が、内臓脂肪と中性脂肪が優位に低下したことが確認されています。
③糖の吸収スピードの遅延作用(食後血糖の上昇抑制作用)
食べた糖質は、体内でブドウ糖へと分解された後、小腸で吸収され肝臓へ送られていきます。
一方、難消化性デキストリンと糖質を一緒に摂ると、難消化性デキストリンが小腸でブドウ糖を吸収するスピードを緩やかにすることが分かっています。
それに伴って、ブドウ糖を細胞内に取り込む働きをするインスリンの分泌も緩やかになることも分かっています。
実際に、ヒトを対象として、うどん定食食べるとき、難消化性デキストリン5g入ったお茶を飲むグループと難消化性デキストリンが入っていないお茶を飲むグループを比較したところ、難消化性デキストリンの入ったお茶を飲んだ人の方が、血糖値の上昇が優位に緩やかであったという結果も得られています。
④整腸作用
難消化性デキストリンは腸内細菌のエサとなり、善玉菌を増やし、悪玉菌を減らして腸内環境を良くする効果が期待できます。
また、難消化性デキストリンは水分を含むと膨らむ性質があり、腸内粘膜を刺激して便通を促し、排便回数を増やします。
実際ヒト試験で、難消化性デキストリンを摂ることで糞便量および排便回数の増加が確認されています。
⑤ミネラルの吸収促進作用
一般に食物繊維はミネラルの吸収を阻害すると認識されていましたが、粘性が低い食物繊維は、ミネラルの吸収を促進することが分かってきています。
難消化性デキストリンもミネラルの吸収を促進するという結果が報告されています。
難消化デキストリンが中性脂肪を低下させるメカニズム
このように難消化性デキストリンは多くの生理機能を持ちます。その中でも「整腸作用」、「食後血糖値の上昇抑制作用」、「食後中性脂肪の上昇抑制作用」の3つの効能が特定保健用食品の関与成分として消費者庁に認められています。
この3つの効能は、中性脂肪を低下させる効果が期待できます。そのメカニズムについて説明していきます。
まず一つ目の「整腸作用」についてです。
難消化性デキストリンは水溶性食物繊維であるため、乳酸菌など善玉の腸内細菌のエサになります。
そのため、腸内環境が整い、余分な中性脂肪やコレステロールを排出しやすくなることで、中性脂肪の低下が期待できます。
次に二つ目の「食後血糖値の上昇抑制」についてみていきましょう。
難消化性デキストリンを食事の前や食事と一緒に摂ることで、糖質の吸収を緩やかにします。
すると糖質を脂肪細胞などに取り込む働きをもつインスリンの分泌も緩やかになります。そのため、糖質が中性脂肪として蓄えられることを抑えてくれます。
3つ目の「食後中性脂肪の上昇抑制作用」についてです。
脂質が代謝するときに、脂質は脂肪酸とグリセロールに分解してミセルに取り込まれて吸収されます。
この分解に関わっている膵リパーゼの抑制やミセルを形成する胆汁酸の安定化をすることで、中性脂肪の上昇を抑制していることが分かっています。
難消化性デキストリンの摂り方
最後に、難消化性デキストリンの摂り方について紹介していきます。
難消化性デキストリンが入った特定保健用食品は、お茶などの飲料や青汁などの粉末、嗜好品などのゼリーとさまざまな商品として販売されています。
粉末状のものは、スティックタイプのものが多く、持ち運びにも便利です。味に癖がないので、飲み物や汁ものに入れて簡単に飲むことができます。
数多くある商品の中から自分に合ったものを探してみましょう。
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商品ごとに、摂取の量や摂取するタイミング、さらには注意事項などが記載してあります。よく読んで、安全かつ効果が期待できる方法で摂取することをおススメします。
また、難消化性デキストリンを摂取していれば中性脂肪が減ると思い込み、いつも以上に糖質や脂質の多い食事をしていると本末転倒です。
バランスのとれた食事と規則正しい生活習慣や運動をする中で、中性脂肪を減らす手助けをしてくれるものの一つと位置付けて、上手に活用してみてくださいね。
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この記事を書いた管理栄養士さん
名前:あや
保有資格:管理栄養士
大学・大学院で生活習慣病について研究、卒業後は製薬会社に勤務。
栄養学に興味を持ち、管理栄養士資格を取得。
現在はダイエット・更年期向け向けの食事指導を行っている。